研究実績の概要 |
金属ナノ粒子は、水素吸蔵量、水素の吸蔵/放出温度の低減、生成水素化物の安定性等の観点から、次世代水素吸蔵材料として有望である。申請者は、10 nm以下のPdナノ粒子中の強束縛水素の存在や、異方性Pdナノディスクにおける局在表面プラズモン共鳴(LSPR)誘起C-Cカップリング反応の加速を発見している。本研究では、可視・近赤外領域にLSPRを有するPdナノディスクを用い、可視・近赤外LSPR誘起電子注入による水素分子の解離加速・水素吸蔵量の増大、ならびに、結晶内常温・常圧水素強閉じ込めを目的とする。 本年度は、Pdナノディスクへの異種元素固溶によるLSPRピークシフトを確認するため、昨年度に引き続きPdナノディスクへの炭素原子固溶について検討した。ポリビニルピロリドン(分子量 40,000)を保護剤兼還元剤として用い、四塩化パラジウム(II)酸ナトリウムから一辺79±16 nm、厚さ23±3.2 nmのPdナノディスクを合成した。このポリビニルピロリドン保護Pdナノディスクをオレイルアミンに配位子交換後、トリメチルアミンと反応させたところ、X線回折測定からPdの格子膨張が確認され、炭素原子のPdナノディスク格子への侵入が示唆された。この時、クロロホルムの存在の有無により、Pd副格子が六方最密構造あるいは立方最密構造のいずれかをとることを発見した。さらに、炭素原子の侵入によりPdナノディスクの誘電率が変化し、LSPRピークが長波長シフトすることが分かった。すなわち、Pdナノディスクへの水素吸蔵においてもLSPRピークが長波長シフトすると考えられる
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