研究課題/領域番号 |
16K13979
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤内 謙光 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30346184)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多孔質構造 / 有機塩 / 超分子 / 発光変換 |
研究実績の概要 |
本研究は結晶状態において化学刺激および物理刺激により動的に分子配列を変換し、発光プロセス制御による劇的な発光挙動の変化を生じる、ダイナミック発光変調多孔性物質の開発を狙いとしている。この多孔性物質に有機情報伝達物質を選択的に取り込み、特異的に発光挙動を変化させるシステムを構築する。これまで情報伝達物質のような生体有機低分子を直接生細胞内で可視化する手法は、タンパクや金属イオン、オルガネラと違い構築されていない。得られた発光変調物質をナノクリスタル化し、水分散性、細胞膜透過性を付与する。生体有機低分子が関与する生命機構を明らかとするバイオセンサーおよび新規の作用機序に基づく生体機構イメージングプローブを創製することに挑戦する。本年度の研究成果について以下に列挙する。 ①多環式芳香族化合物に酸性基を導入した機能団分子を複数種類合成した。 ②合成したカルボン酸やスルホン酸化合物を用いてトリフェニルメチルアミンと複合体を作成し、多孔質構造を構築したところ、酸性化合物の特性に応じて超分子集合様式が変化し、違った大きさ、形の多孔質構造が得られた。 ③得られた多孔質構造は、取り込んだ化学物質に応じて発光色を青色から赤色まで大きく変化した。また多孔質構造の違いにより、化学物質への選択性が見られた。これらの選択性と特性が異なる材料を複合的に組み合わせることで、嗅覚や味覚のような複合センサーを達成できると考えられる。 ④これらの多孔質材料は化学物質だけではなく、種々のガス物質にも適用できることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた化合物群の合成に成功した。さらにそれらの化合物を用いた多孔質構造は、適度な発光変換特性と化学物質への選択性を有していた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策を以下に示す。 ①分子構造・分子集合データと発光特性・発光挙動のデータをコンピュータケミストリーの観点から解析し、発光化学的論理性の確立に努める。実験と理論両面からの検討を進めることでを、仮説と実証を積み重ね、目的である「ダイナミック発光変調物質の開発」を達成する。 ②さらに発光変調物質(結晶材料)をナノクリスタル化することにより、高速応答・高感度化を達成し、センシングデバイスおよびバイオイメージングツールとしての応用を検討する。ナノクリスタル化にはレーザーアブレーション法や再沈澱法を用い、ナノクリスタルの安定性、水分散性、機能作動性などについて検証する。 ③ナノクリスタルを用いて、化学物質、生体物質、ガスなどの吸着性の検討を行い、発光変調などを行う。具体的なターゲット分子としては、入手しやすく安定したコレステロールを初めとするステロイド系物質および性ホルモンのようなステロイドホルモンとする。 ④ナノクリスタルの分散液をドット・ブロッティングすることで、発光性多孔質材料を用いたケモセンシングデバイスを作成する。作成したデバイスの検証と、改善をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
化合物合成の試行錯誤に多くの時間と予算が必要であると考えていたが、当初合成した酸性化合物が予想以上に良い物性を示したので、その評価に多くの研究時間を割いたため、予算の執行額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は本年度得られた結果をもとにさらに合成を加速し、高機能が期待できる物質群を開発する。そのために試薬等に予算を割く。また効率的な合成確認のために有効なNMRプローブを購入する。また、研究成果を積極的に公表するための学会等への参加費用、旅費に使用する。
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