研究課題/領域番号 |
16K13982
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池田 篤志 広島大学, 工学研究院, 教授 (90274505)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | センサー / 超分子化学 / 生体分子 / ポルフィリン / ホストーゲスト相互作用 |
研究実績の概要 |
当研究では、光電気化学センサーの作製を目指している。そのため、基板上にポルフィリンなどの色素を積層する必要がある。電極上ではポルフィリンを密に積層すると、励起子の自己失活やゲスト分子との相互作用の立体障害となることが予想される。そこで、予めシクロデキストリンによってポルフィリンを包接し、ポルフィリン間の接触をできないようにすることを考えた。このシクロデキストリン・ポルフィリン錯体を基板から延ばした官能基とつなげることで、密に積層されすぎることを防ぎ、高感度センサーとする。 本年度は、シクロデキストリンとの錯体形成におけるポルフィリンのメソ位の置換基の影響について調べた。ポルフィリンと基板上の官能基とが反応できるように、メソ位にピリジンを1~4個もつポルフィリンを合成した。これらのポルフィリンの1H NMRスペクトルを測定するとフェニル基の方がピリジル基よりもシクロデキストリンの環を貫通しやすいことが明らになった。例えば、trans位に二つのピリジル基、残りがフェニル基のポルフィリン誘導体の場合、NMRスペクトルから全ての錯体がフェニル基がシクロデキストリンを貫通し、ピリジル基は二つのシクロデキストリン間から出た構造になっていることがわかった。さらに、この構造は単結晶X線構造解析からも確認できた。今後、もし、この錯体を基板に積層できた場合、メタノールなどの極性の有機溶媒で洗浄することでシクロデキストリンを外すことができると考えられ、密にポルフィリンが積層されているがポルフィリン間に空間が存在するセンサー用の基板が準備できるものと期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終目標であるセンサーの開発に向け、その前駆体となるポルフィリン/シクロデキストリン錯体の構造解析などを行っている。これら、センサー開発の基礎となる研究が順調に進み、派生テーマとしてSCI論文などに発表できているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、シクロデキストリン・ポルフィリン錯体を基板に共有結合的に積層することを目指す。センシングするターゲットとして、アニオン性部位とπ系の部位を持つ生体物質を選び、そのセンシング能力を調べる。 また、当初目標の一つである長波長領域の光によるセンシングも行うため、長波長領域に吸収を持つポルフィリンについても検討する。このポルフィリンの候補としてクロリン誘導体を用いることを計画している。クロリンは600nm以上の領域に比較的大きな吸収を持つのが特長である。
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