研究課題/領域番号 |
16K13983
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高倉 克人 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60396843)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 両親媒性分子 / 転移反応 / アルドール縮合 / Diels-Alder反応 / ミセル / ベシクル |
研究実績の概要 |
平成28年度、両親媒性分子間長鎖転移反応により、水中でミセルを形成しやすい1本鎖型両親媒性分子からベシクルを形成しやすい2本鎖型両親媒性分子が生成する反応系の構築を検討した。その中で、NMRスペクトル測定により、以下の三つの反応系について、水溶液中で両親媒性分子の形成する会合体を反応場とする長鎖転移反応が進行することを見出した。 (1)過剰量の塩基存在下、可逆なアルドール縮合反応に基づいて、1本鎖型両親媒性α,β-不飽和ケトン誘導体と1本鎖型両親媒性アセトフェノン誘導体の間での長鎖アルデヒドの転移反応が進行した。 (2)可逆なDiels-Alder反応に基づいて、1本鎖型両親媒性フラン-マレイミド付加物と1本鎖型両親媒性マレイミド誘導体の間での長鎖アルキルフランの転移反応が進行した。 (3)1本鎖型両親媒性チオールエステルの加水分解反応と、これにより生成する長鎖アルキルチオールの1本鎖型両親媒性マレイミド誘導体への付加反応が逐次進行することに基づく両親媒性分子間長鎖チオールの転移反応が進行した。 また、上記反応系(1)~(3)のいずれにおいても両親媒性分子の形成する会合体がミセルからベシクルに形態変換することが光学顕微鏡観測の結果から示唆された。上記研究成果について、日本油化学会第55回年会(講演番号:3E-03)、日本化学会第97春季年会(講演番号:2B6-34)、第22回高専シンポジウム(講演番号:PChe26,PChe27)において研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己複製ベシクルを構築するために必要な、1本鎖型両親媒性分子から2本鎖型両親媒性分子が生成される反応系について、新規な両親媒性分子間転移反応をみっつ見出すことができている。また、見出した両親媒性分子間長鎖転移反応の進行に伴い、水中で両親媒性分子が形成する会合体がミセルからベシクルに形態変化することが示唆される結果も得られている。以上より、従来にはみられない反応系を適用させた新規自己複製ベシクルを構築するための基礎的知見が得られたと考えられる。 しかしながら、平成28年度には自己保存能をもつ自己複製ベシクルについて検討するためには生成する2本鎖型両親媒性がキラル中心をもち、なおかつその立体化学を制御できる触媒や微小反応場に関する検討を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に見いだされた長鎖転移反応系を組み込んだ新規自己複製ベシクルの構築を行うため、両親媒性分子の形成するベシクル膜に親和性をもつ触媒の合成を行う。特に、研究目標の達成に必要な、転移反応生成物の立体化学の制御を実現できるよう、触媒活性部位近傍へのキラル中心の導入について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入を定価ベースで計画していたが、実際には値引きなどにより計画よりも低価格で納入されたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度よりの繰越金(80237円)については、本申請課題にかかわる消耗品(有機合成試薬、有機合成用溶媒など)の購入のために使用する。
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