研究課題/領域番号 |
16K13985
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
船津 麻美 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 助教 (00758956)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化グラフェン / 計算 / 修飾 / 酵素 / 機能性分子 / デバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、新規化学修飾グラフェン材料を開発するためのベース材料として酸化グラフェンを用いる。酸化グラフェン(GO)は、グラフェン骨格に様々な酸素官能基が付加した構造を持つため、高いプロトン伝導性を示し、更にGOを還元したrGOは、その還元手法(熱・化学・電気化学・光等)により電子伝導度の制御ができることが確認できている。そのためこれらの特性を活かした燃料電池や太陽電池といったデバイス化への糸口が見出されつつある。一方、GOの官能基に注目し、種々の還元方法を考えた場合その基準となる特性値が定まっていない上、GOの研究は非常に盛んに進んでいるに対してリファレンスとなる理論計算系の報告が少ないことが現状の課題である。そこで、本年度はGOの各種還元方法に基づいた理論計算を実施することにより基準となるモデル及び計算方法を検討するために、ベースとなる炭素骨格と官能基1つ1つの構造から特性を結び付けることに注力した。ベースとなるGOのモデルを導くために、GOの炭素数や官能基等を考慮し、基本骨格を決めた。また、各種還元手法において特徴的な情報(欠陥生成、CH基やOH基増加等)を設定し系統的な計算を進めた。さらに、様々な元素ドーピングや機能性分子、酵素などを用いた化学修飾グラフェンを合成するために、官能基の情報等があらかじめ報告されている材料(セルロースファイバー等)用い、修飾方法を検討し、酸化グラフェンへ活かしその修飾に一部成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デバイス化時に重要なrGOの状態を把握するために酸化グラフェンの理論計算のベース設計をすることができた。更に、水溶液中でのGOへの酵素固定によるGOの化学修飾法を検討した。これより酵素の活性能を安定化させ、長時間その活性を維持させることに成功した。現在、一部の酵素では、修飾されたGOの官能基の種類により、酵素活性能維持に差がでることを見出した。しかしながら、デバイス化へ活かす手法の検討等未達であるため課題が残る。
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今後の研究の推進方策 |
③今後は以下を中心に研究を推進する。 1)理論計算による検討:これまでにモデル化できたベース酸化グラフェンを用い、酸化グラフェンの各種還元体と電子伝導の関係を明らかにする。 2)酸化グラフェンの各種還元体の観察:高分解能なAFMとTEMを用いて、酸化グラフェン還元体の局所構造を観察する。 3)化学修飾法の検討:これまでに検討してきた酵素固定化法を利用し化学修飾電極作製方法と確立させる。また修飾の種類や用いる酵素等により、酸化グラフェンの各官能基における修飾部位の機能へ及ぼす役割を明らかにする。 4)デバイス化の検討:申請時に提案した酸化グラフェンを用いた太陽電池および燃料電池の作製についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
熊本震災等により当初計画通りの購入が進まなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はさらに理論計算を進めるためこのソフトの維持費及び酵素による化学修飾を各種進めるために、酸化―還元能に長けた酵素や機能性分子等の購入、これらを評価するための電極基板(櫛型電極)や各種分析用基板(TEMグリッド、AFM用基板)等の物品購入費として充てる。
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