研究課題/領域番号 |
16K13990
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
網井 秀樹 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (00284084)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フッ素 / 水素結合 / ジフルオロメチル基 / カルボニル基 / 分子触媒 |
研究実績の概要 |
本計画研究の全体構想は、有機分子変換反応の新開発である。具体的には、ジフルオロメチル基が醸し出す水素結合場の有機反応への応用の可能性を調査し、これを活用する高選択的有機合成反応を開発することである。 有機化合物にジフルオロメチル基を導入する反応の報告例が乏しいので、平成28年度に引き続き、まず、芳香族ジフルオロメチル化反応を調査した。o-ブロモヨードベンゼンに対し、銅触媒ジフルオロ酢酸部位導入クロスカップリング反応を行い、選択的にヨード基をジフルオロ酢酸部位に変換した。その後、ベンゼン環上のブロモ基をリチオ化し、分子内環化を試みたところ、ジフルオロベンゾシクロブテノン中間体が開環して、o-ジフルオロメチル安息香酸が選択的に得られた。今年度は、本反応で得られる生成物の収率向上を念頭に置き、研究を進めた。反応停止剤(クエンチ剤)として水の代わりにエタノール、もしくはアミンを加えると、反応生成物のエチルエステル、アミドの収率が格段に改善された。 ベンゼン環上に様々な置換基を有するo-ブロモヨードベンゼンを基質を合成し、多様なo-ジフルオロメチル安息香酸エステル、アミドの合成反応の一般性を調査した。さらに、ジフルオロメチル基の水素結合ドナーとする分子触媒合成を指向して、ジフルオロメチル基とカルボニル基の分子内水素結合の有無を詳細に調査している。種々の分光学的手法を用いて、ジフルオロメチル基とカルボニル基の分子内水素結合の存在について検証しているが、現在のところ、1H NMRにおいて、分子内水素結合の存在を示唆するデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
芳香族ジフルオロメチル化合物の合成法を確立した。特に、カルボン酸部位の導入を伴う芳香族ジフルオロメチル化反応は学術的に興味深い。ジフルオロメチル基の水素結合ドナーとしての可能性調査まで研究が進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ジフルオロメチル化合物の選択的合成法が確立されたので、「ジフルオロメチル基を不斉補助基」とする反応基質を用いる炭素-炭素結合形成反応を実施する。さらに、ジフルオロメチル基を有するキラル触媒を合成し、ジフルオロメチル基の不斉反応への有効性を系統的に検討調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
多岐にわたるジフルオロメチル化合物の分子触媒の合成についてはH30年度に、系統的実施が必要となる。そのため、未使用額については、計画的に翌年度に持ち越し、効率的な実験検討に用いる。
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