本研究では、ブロック共重合体(BCP)薄膜における誘導自己組織化(DSA)を、大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)を用いて基板表面近傍におけるミクロ相分離構造形成の初期段階を直接観察し明らかにすることを目的としている。
昨年度は、BCPが形成するミクロ相分離構造の無染色観察に向けたASEMの最適観察所油研の探索を行い、2つのブロック鎖の間の電子密度差の大きい、Poly(styrene-b-forrocenyldimethylsilane)(PS-b-PFS)を用いると、反射電子によるコントラストが十分に得られることが分かった。その結果、ASEMによるミクロ相分離構造の無染色観察の目処をつけることができた。
今年度は、BCP薄膜の成膜時におけるミクロ相分離構造の形成過程の直接観察を試みた。まず、使用する溶媒の電子線に対する安定性を検討した。PS-b-PFSの良溶媒であるクロロホルムおよびトルエンに電子線を照射したところ、クロロホルムでは電子線照射により分解する様子が観察されたのに対して、トルエンは分解や重合反応が起こらず安定していた。そこで、PS-b-PFSのトルエン溶液を用いてミクロ相分離構造の形成過程の直接観察を行った。ポリマー溶液キャスト直後は全く構造が観察されなかったが、約44分経過後にPFSの球状ドメインが観察され始め、時間経過に伴って、粗大化していく様子が観察された。また、溶媒蒸発方向に配向してミクロ相分離構造が形成された。完全にトルエンが蒸発するまで約47分であったことから、ミクロ相分離構造は溶媒蒸発の最終段階で起こっていることが明らかになった。
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