研究課題
近年、各分野の発展に伴い、接着へも多様な機能が求められる。一般的な接着現象は、物質界面で働くアンカー効果、静電相互作用、化学結合形成などの相互作用に由来する。我々は接着のさらなる機能化のため、非共有結合を利用した新しい接着システムの構築に取り組んでいる。環状オリゴ糖であるシクロデキストリン (CD) は、疎水性分子をゲスト分子として包接するホスト-ゲスト相互作用を示す。本研究では、接着の対象を硬質材料に移し、金属基板間をホスト-ゲスト相互作用で架橋して接着を実施した。動的な架橋点の効果で、強靭性、自己修復性などの機能付与を試みた。接着操作の概要を示す。アルミニウム合金基板に大気圧プラズマ処理を施して親水化後、3-(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシランを修飾し、基板表面に重合性官能基を修飾した (Acryl sub)。続いて、βCD とゲスト分子アダマンタン (Ad) の各アクリルアミド誘導体を水中で混合し、包接錯体を形成させた。ここにアクリルアミドを主鎖モノマー、ペルオキソ二硫酸アンモニウムを開始剤として加え、モノマー水溶液を調製した。Acryl sub 上にモノマー水溶液を塗布し、もう一枚の Acryl sub で塗布面を挟み込むように被せて圧着した。この状態で70 °C で12時間加熱して重合を進行させた後、真空乾燥により水を除去した。これをホスト-ゲスト架橋接着体 (HG) とする。比較サンプルとして、N, N’-メチレンビスアクリルアミドを架橋剤とした、化学架橋接着体 (CC) も作製した。これらについて引張試験を行い、接着強度や動的な架橋点の特性を評価した。その結果、硬質材料表面に重合性官能基を修飾して、これを一つのモノマーとして、主鎖、ホスト、ゲストのモノマーと共重合させるという非常に簡便な方法で、硬質材料間の超分子的な接着を達成した。
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