研究課題
高分子の側鎖に糖鎖を結合させた、生体機能性高分子である、糖鎖高分子について、リビングラジカル重合によって分子の空間構造を制御、設計して、合目的的に分子認識能を設計している。特に高分子をペプチドのデノボデザインのように狙って機能を獲得できるように設計できる指針の獲得を検討している。1)リビングラジカル重合による分子鎖長とブロックポリマーの設計:糖鎖を認識するタンパク質(レクチン)では、糖鎖と結合するサイトが一定間隔で離れて複数存在する。これまでの糖鎖高分子の設計では基本的に糖鎖を多数提示する以外のことはできていなかった。糖鎖高分子の分子鎖の長さを精密重合法で制御して、タンパク質との結合解析を行うことで、半経験的に糖鎖高分子の分子鎖長を明らかにした。その上で、他の高分子と組み合わせてブロックポリマーを合成することで、多価効果と他の高分子の機能を併せ持つ新しい分子の設計を可能にした。2)リビングラジカル重合を利用したナノメディシンの設計:モノマーのラジカル反応性を明らかにした上で、クリックケミストリーによってオリゴ糖鎖を導入できるアクリルアミドを開発した。シアル酸オリゴ糖を導入した高分子ではインフルエンザウイルスに対する阻害活性を示し、高分子の分子鎖長、糖鎖密度によって、インフルエンザウイルスの阻害活性を調節することができた。ヒトとトリのインフルエンザウイルスに対する分子認識性は糖鎖密度に強く依存し、特定の糖鎖密度で認識の特性が良く発現した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに(1)長さを種々に変えた糖鎖高分子の合成とタンパク質の分子認識の解析、(2)多価効果を同様に発揮できるホモポリマーとブロックポリマーの合成に成功している。これまでの研究で、高分子の分子デザインによって、多価効果を基本とする分子認識の制御に成功している。25,50,100merの分子の長さ、分子認識能との相関をレクチンを用いた蛍光解析から明らかにしている。これらの定鎖長ポリマーを分子認識のビルディングブロックとして組み入れることで、ブロックポリマーにおいてもホモポリマーと同様に機能を発揮できることを明らかにした。これは、ペプチド合成やDNAナノテクノロジーで行われているような合目的的な分子デザインを一部実現したものである。本研究はおおむね時間スケールの上で、予定通りに進行している。学会発表、論文発表ともに順調に行っている。
本研究では、精密重合を駆使することで、糖鎖高分子の合目的的な機能設計法の獲得を目指している。最終的には合目的的な設計によって、抗体を超えるような分子認識能を発揮するナノメディシンの開発を目指す。1)糖鎖高分子の精密合成法の検討リビングラジカル重合を自由自在に駆使できるようにすることが重要である。主にRAFT剤を用いたリビングラジカル重合を検討している。RAFT剤については、既存のものを使ってきたが、RAFT剤の構造をモノマー(メタクリル酸骨格、アクリルアミド骨格)に適したものになるように設計する。また、メタクリル酸骨格のポリマーについては、原子移動ラジカル重合法についても検討を行う。ブロックポリマーの合成においては、逐次重合ができるように合成法を検討する。2)生体機能の解析方法の検討糖鎖高分子の分子認識を構造と分子認識能が機知のタンパク質(レクチン)を用いて詳細に解析を行う。蛍光ラベル化したレクチンを用いた解析を主とするが、最終的には結合がより詳細に明らかになるような、等温カロリメトリーの使用も検討する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 2件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (23件)
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