リビングラジカル重合を利用して、明確なシーケンスを持った高分子を設計、合成し、望む分子認識能を持つ生体機能性高分子の開発を行った。 1)ブロック共重合体による糖鎖の配置の制御と分子認識能の発現:ターゲットとするタンパク質はコンカナバリンAで糖鎖と結合するタンパク質のサイトが6.5nmずつ離れている。長さ、ブロックを制御した糖鎖高分子をいくつ重合させた上で、蛍光消光実験によってタンパク質との結合定数を評価した。2箇所のタンパク質結合サイトに糖鎖が配置するように設計された、マルチブロック共重合体について、結合定数が顕著に増大することがわかった。 2)マルチブロック重合体の合成法の開発:1ではマクロマーを作製して、逐次重合したが、合成に時間を要し、収率も低かった。系中でモノマーを逐次加えて連続的に重合する手法について設計した。特に、完全に水溶性の可逆的付加開裂連鎖移動剤(RAFT)を新たに設計することで、糖鎖高分子および、マルチブロックな糖鎖高分子をワンステップで重合することができた。コンカナバリンAに対する結合は1)と同様の手法で評価して、設計通りの分子認識能を得ることができた。 3)糖鎖高分子を用いたウイルス阻害剤の開発:病原体である、インフルエンザウイルスに対する毒性阻害能について検討を行った。インフルエンザウイルスではシアリルオリゴ糖を認識している。リビングラジカル重合を用いることで、シアリルオリゴ糖の配置を制御し、インフルエンザウイルスヘマグルチニンへの結合能の制御と解析を行った。糖鎖高分子の分子鎖長を変えたところ、ヘマグルチニンの複数の糖鎖結合サイトに結合するように高分子を設計したときに強いウイルス中和能を発揮した。同時に、ウイルスへの糖鎖の結合能は糖鎖密度に依存しており、高分子主鎖に対して、70%の糖鎖を組み込んだときに、最も適切な中和能を発揮することがわかった。
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