研究課題
光で内包ゲスト分子を制御放出可能なポリイオンコンプレックス(PIC)ベシクルを作製することが本研究の目的である。PIC形成には反対電荷を持つ2種類のポリマーの電荷バランスが重要である。研究計画作成当初は、カチオン性ポリマーの側鎖にランダムにα-シクロデキストリン(CD)を導入し、さらにCDにカチオン性のアゾベンゼンを包接することで、疑似カチオン性ポリマーを合成し、アニオン性のジブロック体と混合して、静電相互作用によりPICベシクルを作製する予定だった。しかし疑似カチオン性ポリマーの合成が困難だったため、疑似アニオン性ポリマーを合成した。つまりアニオン性ポリマーとして側鎖にランダムにCDを含むポリアクリル酸を合成した。また生体適合性のホスホリルコリン基を側鎖結合した親水性ブロックと、側鎖に4級アンモニウム塩を含むカチオン性ブロックから成るジブロック共重合体を制御ラジカル重合法で合成した。反対電荷を持つ両者を混合すると、静電相互作用でPICベシクルが形成されると期待される。また予備実験としてCDとアニオン性アゾベンゼンの包接挙動について、NMRと可視-紫外吸収スペクトルで調べた。その結果光を照射する前のトランス型のアゾベンゼンはCDと包接錯体を形成するが、紫外光照射でシス型アゾベンゼンに異性化すると、包接錯体が解離することを確認した。今後側鎖にCDを含むポリマーにアニオン性アゾベンゼンを包接させた疑似アニオン性ポリマーと、生体適合性でカチオン性のジブロック共重合体を電荷を中和するように混合することで、PICベシクルが形成されることを調べる、さらに光照射したときに、アゾベンゼンとシクロデキストリンの包接錯体が解離して、カチオンの数が減少し、電荷バランスが崩れることで、PICベシクルが崩壊することを確認する。
2: おおむね順調に進展している
申請書中の研究目的では、側鎖にCDを結合したカチオン性ポリマーに、4級アンモニウム塩を含むアゾベンゼンを包接することで、疑似カチオン性ポリマーを作製することになっていた。しかし、カチオン性ポリマーの側鎖にランダムにCDを導入することは困難だったためアニオン性のポリアクリル酸ナトリウムの側鎖にランダムにCDを導入した。他の実験は予定通りに進んでいる。今後は疑似アニオン性ポリマーと、生体適合性ブロックとカチオン性ブロックからなるジブロック共重合体を混合することで光応答性PICベシクルを作製する。
今後さら実験を簡単に進めるために、電荷のバランスを崩す方法として、光で解離するニトロベンゼンを側鎖結合したポリマーの利用も検討する。o-ニトロベンジルメタクリレートは光照射でメタクリル酸ナトリウムに変化するため、光照射で電荷を増加させることができる。PICベシクル中に光分解性ユニットを導入しておくことで、光照射による電荷バランスをずらすことで、ベシクル構造が崩壊するのかを確認する。
計画当初よりも消耗品を必要としなかった。
今後必要となる消耗品に予算を使う予定である。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (23件) (うち国際共著 8件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (61件) (うち国際学会 22件、 招待講演 8件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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