本申請研究の目的は、光で電荷バランスを崩すことで、会合体を崩壊して内包ゲスト分子を制御放出することである。そこで本研究では、まず光照射によって疎水性のニトロベンジル基が親水性のカルボン酸に変化することに着目し、ニトロベンジル基を側鎖に持つ疎水性のポリo-ニトロベンジルメタクリレート(PNBM)と親水性で生体適合性を持つポリ(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)からなる両親媒性ジブロック共重合体(PmNn)を制御ラジカル重合法で合成し、光応答性の会合体を作製した。PNBMは光開裂により親水性のポリメタクリル酸(PM)とo-ニトロソベンズアルデヒドとなるため、PmNnは水中でPNBMがコアのミセルを形成し、光照射で親水性ジブロック共重合体(PmMn)となりミセルが崩壊する。よって、PmNnのミセル内部に疎水性ゲスト分子を取込みが可能で、光照射によりゲスト分子の放出ができると期待される。 pH 12のP20N75水溶液を用いて照射時間に対する吸収スペクトルの変化を調べると、照射時間の増加に伴って264 nmのピークが減少して280と309 nmのピークが増加した。よって、照射時間と共に光開裂が進行することでo-ニトロソベンズアルデヒドが解離した。光照射1時間以降はスペクトルに変化が見られなかったため、ポリマーの光開裂が完了したと考えられる。また、pH 12のP20N75水溶液を用いて流体力学的半径(Rh)と、散乱光強度(SI)の変化を調べた。照射時間に伴ってSIは減少したがRhは変化しなかったため、光開裂により会合体の密度は低下しているが完全には崩壊していない。さらに、疎水性ゲスト分子のナイルレッドのP20N75ミセル内への取込みを確認した。よって、本研究で作製した光応答性ミセルはミセル内部に疎水性のゲスト分子の取込みが可能であると考えられる。
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