らせん高分子は光学分割材料,不斉誘起触媒として期待される。一方,両末端に反応性官能基を有するテレケリックポリマーは,接着剤やコーティング剤,塗料に活用されている。テレケリックポリマー末端基の反応性は,ポリマー主鎖による外部からの遮蔽,立体障害のため,対応する低分子化合物に比べて低いが,剛直な主鎖を有するポリマーを用いることで,両末端官能基が主鎖に遮蔽されることなく高い反応性を示すテレケリックポリマーの創成が期待される。本研究では,以下の2項目を検討した。 (1) 両末端にヨード基またはエチニル基をもつ,新規テレケリック光学活性らせん共役高分子の合成と,様々なジエチニルまたはジブロモアレーンとの反応ならびに特性 :D-ヒドロキシフェニルグリシン由来の両末端にエチニル基およびヨード基を有し,折り畳みらせん構造を形成するポリフェニレンエチニレンを合成し,各種蛍光発光性置換基の末端への導入に成功した。 (2)両末端にヨード基またはエチニル基をもつオリゴペプチドの合成と重合: Boc-Ala-Aib-OMeのN末端を脱保護し,各種安息香酸誘導体と縮合させ,末端にハロアリレンおよびエチニルアリレンを有する化合物を合成し,薗頭-萩原カップリング重合して対応するポリマーを得た。N末端のフェニル基のメタ位に置換基をもつモノマーはCDシグナルを示さなかったのに対し,パラ位に置換基をもつモノマーは強いCDシグナルを示した。前者は分子内で折り畳み構造を形成しないのに対し,後者は分子内水素結合により折り畳み構造を形成してコンホメーションが固定され,CDシグナルを示したことが示唆された。対応するポリマーはモノマーと同様の傾向を示し,置換基の位置がモノマー,ポリマーのコンホメーション,二次構造に大きな影響を及ぼすことが確認された。
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