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2016 年度 実施状況報告書

遠紫外光を用いる選択的超高感度プラズモンセンサーの開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K14025
研究機関関西学院大学

研究代表者

尾崎 幸洋  関西学院大学, 理工学部, 教授 (00147290)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードプラズモンセンサー / 遠紫外 / 表面プラズモン共鳴 / アルミ薄膜 / 減衰全反射法
研究実績の概要

金属表面の屈折率変化を鋭敏に検出するプラズモンセンサーは、バイオセンサーをはじめとした幅広い分野で研究が進められており、その検出感度の向上は大きな課題となっている。本研究では、物質が数多くの電子遷移を示し高い屈折率を持つ、波長200 nm以下の遠紫外光を用いることで、高い感度と物質選択性を持つ新たな表面プラズモンセンサーを開発することを目的とした。
本研究では減衰全反射(ATR)型のセットアップを用いて、石英あるいはサファイヤ製のプリズム上に蒸着したアルミニウム薄膜の反射率を測定した。この装置は、プリズム中に重水素ランプからの光を入射し、アルミ薄膜を蒸着した界面で全反射した光を検出する。入射角度を変えながら、波長140-300 nmのスペクトルを測定することができる。遠紫外光を検出するためには光路中の水蒸気や酸素を除去する必要があるが、装置内を乾燥窒素で置換することで真空雰囲気よりも簡便に達成した。
アルミニウム薄膜の遠紫外領域を含んだ領域のプラズモン共鳴特性を測定し、さらにその屈折率依存性を明らかにすることに成功した。具体的には、石英プリズム上に製膜したアルミニウム薄膜の反射率を測定し、空気中と有機溶媒(HFIP)中で、その入射波長依存性と入射角度依存性を明らかにした。また、サファイヤプリズム上にアルミニウム薄膜を製膜することで、より多くの液体分子を測定対象とすることができることを明らかにした。さらに、屈折率の実部(Refractive index n)の影響だけでなく、屈折率の虚部(Extinction coefficient k)の影響についても検討を行い、プラズモン共鳴の吸収と分子の吸収の相互作用(強結合)を観察することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

高く評価する理由は以下のとおりである。独自に開発した減衰全反射(ATR)型のFUV分光装置を用いることで、試料系を大気解放したままFUVスペクトルを測定することに成功し、さらにアルミニウム薄膜上の屈折率に応じたSPR波長とSPR角度のシフトを検出することに成功した。また測定分子の吸収に伴うシフト量の増大や、試料表面の不均一性を反映したスペクトル変化など、FUV領域を利用したからこそのユニークな挙動も明らかになりつつある。下記の一篇の論文発表(1)を行った。またもう1篇の論文(2)が投稿中である。(1) Direct optical measurements of far- and deep ultraviolet, surface plasmon resonance with different refractive indices, I. Tanabe et al., Optics Express, 24, 21886 (2016). (2) Far- and deep-ultraviolet surface plasmon resonance sensors working in aqueous solutions using aluminum thin films, I. Tanabe et al., Submitted to Sci. Rep.
さらに2件の表彰を受けた。(1) 渡利幸治ら「Al薄膜の表面プラズモン特性を利用した新しいSPRセンサーの開発に向けた研究」第10回平成夏季セミナー ~ぶんせき秘帖 巻ノ十~、 ポスター賞受賞 (2)田邉一郎ら「センサー応用に向けたアルミニウムの遠紫外表面プラズモン特性研究」平成28年度日本分光学会年次講演会、若手講演賞受賞

今後の研究の推進方策

今年度の成果を踏まえ、次年度は、遠紫外域の強みをさらに明確に提示していくため、以下のような計画で研究を進める。
第一段階として、波長の短い遠紫外域を利用するメリットを踏まえ、SPRセンサーとしての表面敏感性を実証する。そのために、サイズを制御したポリスチレンビーズをアルミニウム薄膜表面に担持し、それによるSPR特性の変化を検証する。金や銀を用いた可視SPRセンサーに比較して、アルミニウムを利用した遠紫外SPRセンサーは、エバネッセント波の染み出し深さが小さくなるため、ポリスチレンビーズ担持による表面凹凸(PSと空気の混合層)を鋭敏に検出することができると考えられる。また、厚さ数ナノメートルの超薄膜ポリマーを金属上に製膜することで、やはり遠紫外SPRセンサーの表面敏感性を示すことを計画している。
第二段階として、抗原抗体反応センサーとしての応用を踏まえ、Anti-IgGとIgGの選択的結合に伴うSPR特性の変化を検出する。本段階では、金属表面に修飾した擬似抗体としてのAnti-IgGへの擬似抗原としてのIgGの結合を検出する。表面敏感性に加えて物質選択性についても実証するため、意図的に測定波長域に吸収をもたないスクロースなどを系に加えた検証も行う。測定する遠紫外・深紫外域に吸収をもつIgGと、吸収をもたないスクロースが混在する系に置いては、前者(IgG)がより鋭敏に検出されると期待できる。
フレネルの式に基づく数値シミュレーションから、極表面(数nmから十数nm)において従来の可視プラズモンセンサーに比べて400倍以上の感度の上昇が期待できることが、明らかになっている。本研究により、表面反応に伴う屈折率の変化を従来の可視SPRセンサーよりも高感度に検出できると期待でき、その検出下限を明らかにする。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Direct optical measurements of far- and deepultraviolet surface plasmon resonance with different refractive indices2016

    • 著者名/発表者名
      Ichiro Tanabe, Yoshito Y. Tanaka, Takayuki Ryoki, Koji Watari, Takeyoshi Goto, Masakazu Kikawada, Wataru Inami, Yoshimasa Kawata, and Yukihiro Ozaki
    • 雑誌名

      Optics Express

      巻: 24 ページ: 21886, 21896

    • DOI

      http://dx.doi.org/10.1364/OE.24.021886

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 遠紫外‐深紫外SPRセンサー開発に向けたアルミニウムの表面プラズモン共鳴の特性評価2017

    • 著者名/発表者名
      渡利幸治、田邉一郎、田中嘉人、後藤剛喜、居波渉、川田善正、尾崎幸洋
    • 学会等名
      日本化学会第97回春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学日吉キャンパス(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2017-03-19 – 2017-03-19
  • [学会発表] Refractive index dependence of surface plasmon resonance using aluminum thin film for development SPR sensor2016

    • 著者名/発表者名
      K. Watari, I. Tanabe, Y. Tanaka, T. Goto, W. Inami, Y. Kawata and Y. Ozaki
    • 学会等名
      Japan-Taiwan Medical Spectroscopy International Symposium 2016
    • 発表場所
      淡路夢舞台国際会議場(兵庫県・淡路市)
    • 年月日
      2016-12-05 – 2016-12-06
    • 国際学会
  • [学会発表] アルミニウムの遠紫外―深紫外表面プラズモンの屈折率依存性および液体分子との相互作用の研究2016

    • 著者名/発表者名
      渡利幸治、田邉一郎、田中嘉人、後藤剛喜、居波渉、川田善正、尾崎幸洋
    • 学会等名
      応用物理学会関西支部平成28年度第2回講演会
    • 発表場所
      関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス(兵庫県・西宮市)
    • 年月日
      2016-10-07 – 2016-10-07
  • [学会発表] Investigation of far-and deep-ultravaiolet surface plasmon resonance depending on refractive indies and absorbance on Al film2016

    • 著者名/発表者名
      K. Watari, I. Tanabe, Y. Tanaka, T. Goto, W. Inami, Y. Kawata and Y. Ozaki
    • 学会等名
      FACSS SciX 2016
    • 発表場所
      ミネアポリス・アメリカ合衆国
    • 年月日
      2016-09-18 – 2016-09-21
    • 国際学会
  • [学会発表] Al薄膜を用いた紫外線SPRセンサー開発に向けた研究2016

    • 著者名/発表者名
      渡利幸治、田邉一郎、田中嘉人、後藤剛喜、居波渉、川田善正、尾崎幸洋
    • 学会等名
      第10回分子科学討論会
    • 発表場所
      神戸ファッションマート(兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2016-09-15 – 2016-09-15
  • [学会発表] Far- and deep-ultraviolet surface plasmon resonance (SPR) properties of aluminum thin films depending on surrounding index2016

    • 著者名/発表者名
      I. Tanabe, Y. Tanaka, T. Ryoki, K. Watari, T. Goto, M. Kikawada, W. Inami, Y. Kawata and Y. Ozaki
    • 学会等名
      UV and Higher Energy Photonics; From Materials to Applications at SPIE Optics+ Photonics 2016
    • 発表場所
      サンディエゴ・アメリカ合衆国
    • 年月日
      2016-08-29 – 2016-08-29
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Al薄膜の表面プラズモン特性を利用した新しいSPRセンサー開発に向けた研究2016

    • 著者名/発表者名
      渡利幸治、田邉一郎、田中嘉人、後藤剛喜、居波渉、川田善正、尾崎幸洋
    • 学会等名
      第10回平成夏季セミナー~ぶんせき秘帖 巻ノ十~
    • 発表場所
      赤とんぼ荘(兵庫県・たつの市)
    • 年月日
      2016-07-28 – 2016-07-28
  • [学会発表] アルミニウムの遠紫外~可視域 (150~650 nm) における表面プラズモン特性の屈折率依存性2016

    • 著者名/発表者名
      渡利幸治、田邉一郎、田中嘉人、領木貴之、後藤剛喜、黄川田昌和、居波渉、川田善正、尾崎幸洋
    • 学会等名
      平成28年度日本分光学会年次講演会
    • 発表場所
      大阪大学豊中キャンパス(大阪府・豊中市)
    • 年月日
      2016-05-24 – 2016-05-24
    • 国際学会
  • [学会発表] Far- and Deep-Ultraviolet Surface Plasmon Resonance Properties of Aluminum Thin Films Depending on Surrounding Refractive Index2016

    • 著者名/発表者名
      Ichiro Tanabe, Yoshito Tanaka, Takayuki Ryoki, Koji Watari, Takeyoshi Goto, Masakazu Kikawada, Wataru Inami, Yoshimasa Kawata, Yukihiro Ozaki
    • 学会等名
      IUPAC Photochemistry in Osaka
    • 発表場所
      大阪中央公会堂(大阪府・大阪市)
    • 年月日
      2016-04-04 – 2016-04-04
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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