本研究では人工核酸aTNA骨格に水素結合部位を有する人工塩基を導入することで多重鎖形成可能な新規人工核酸の創製を目指した。本年度は前年度合成法を確立したアミノピリミジンオリゴマー及びシアヌル酸オリゴマーを用いた人工六重鎖形成について重点的に検討を行った。 アミノピリミジン、シアヌル酸はそれぞれアデニン、チミン様の水素結合部位を両面に持つため、これらのオリゴマーを混合すれば六重鎖形成が期待できる。実際、末端を蛍光色素もしくは消光色素でラベル化したオリゴマーを混合し、蛍光の温度変化を観察したところ大きなヒステリシスが観察されたことから、これらが大きな複合体を形成していることが明らかとなった。また、複合体の当量比を検討したところ1:1の複合体を形成していることが分かった。更に、複合体の質量を測定したところこれらが3:3の六重鎖を形成した際の分子量が観察された。このように、両面に水素結合部位をもつaTNAオリゴマーを用いることによって、六重鎖構造を調製することに初めて成功した。 六重鎖構造の円二色性スペクトルを測定したところらせん構造を形成していることが示唆された。この六重鎖の機能評価を行うため、金属イオン応答性とpH応答性について検討を行った。その結果、この六重鎖は二価イオン選択的に形成されることが分かった。また、pH 6では六重鎖が安定化される一方、pH 8以上では形成できないことも明らかとなった。このように開発した六重鎖が非常にユニークな機能を持つことが分かった。これらの結果は開発した六重鎖がpHセンサーや金属イオンセンサー、分子スイッチとして機能することを示唆している。 これらの成果を元に現在論文投稿中である。
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