研究課題/領域番号 |
16K14034
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
田中 直毅 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 教授 (60243127)
|
研究分担者 |
和久 友則 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (30548699)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | アルツハイマー病 / タンパク質異常凝集 / 卵白アルブミン / アミロイド線維 |
研究実績の概要 |
昨年度の成果を受けて、本年度は卵白アルブミンが形成するナノ粒子がアルツハイマー病の病原タンパク質アミロイドβの凝集に与える影響を評価した。末端メトキシ化ポリエチレングリコール (PEG, 分子量 : 2000) の末端水酸基とトリクロロ-s-トリアジンとの反応によりクロロトリアジン基をもつ活性化PEGを合成した。この活性化PEGとオボアルブミン (OVA) とを0.1M酢酸緩衝液 (pH 10) 中で反応させることでPEG化OVAを合成した。タンパク質のPEG化はポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認した。得られたPEG化OVAのジクロロメタン溶液とリン酸緩衝生理食塩水とを混合し超音波照射することでエマルションを作製し、その後ジクロロメタンを留去することでナノ粒子を得た。ナノ粒子の粒子径はおよそ100 nmであり、表面電位は負の値を示した。また、疎水性蛍光プローブである1,8-アニリノ-ナフタレンスルホン酸 (ANS) を用いてナノ粒子表面を解析したところ、ナノ粒子存在下でのANSの蛍光シグナルの短波長シフトが認められたことより、ナノ粒子表面には疎水性ドメインが存在することが示唆された。さらに、アミロイドβの線維化挙動に与えるPEG化OVAナノ粒子の影響をチオフラビンT (ThT) を用いて評価したところ、ナノ粒子が系中に存在する場合、ThT蛍光の立ち上がりまでの誘導期が延長されたことより、ナノ粒子はアミロイドβの線維化を抑制することが示唆された。一方で、ナノ粒子化していないPEG化OVAはアミロイドβの線維化を促進した。これらのことよりナノ粒子による線維化抑制には、ナノ粒子表面とアミロイドβペプチドとの相互作用が重要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、アミロイド線維化抑制能を持つナノ会合体を作製し、そこに二種類の脳内移行を促進するリガンドを導入することで、脳内移行性に優れた線維化抑制剤を開発することを狙いとしている。研究当初は、卵白アルブミンの断片ペプチドが形成するナノ会合体をベースマテリアルとして選択したが、これらはアミロイド線維の細胞毒性を抑制できないことが前年度の研究により判明した。そのためベースマテリアルを再設計する必要が生じ、本年度はそのベースマテリアルの物性評価などにとどまり、脳内移行性に関する検討を行うことができなかったことよりやや遅れていると判断した。。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、同様の手法により様々な卵白タンパク質のナノ粒子化を試みるとともに、それらのアミロイド線維化抑制能などについて評価する。さらに、脳内移行を促進することが知られている糖やペプチドなどを導入したナノ粒子を作製し、その脳内移行性についても評価する。
|