研究課題/領域番号 |
16K14038
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
常盤野 哲生 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (50312343)
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研究分担者 |
伊藤 一志 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (30507116)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | レーザー脱離イオン化法 / ポリジメチルジオキサン / カーボンナノチューブ / セルロースナノファイバー |
研究実績の概要 |
平成28年度はシリコーンポリマー/カーボンナノチューブ複合素材の表面改質を目的とした素材作製を検討し、化合物吸着や細胞接着を指標とした物性評価を行った。 ポリジメチルシロキサン(PDMS)の調製時に主剤と硬化剤の混合比(Rc)が5:1~10:1~20:1~30:1と高くなるに伴いPDMSの貯蔵弾性率が低下することを確認した。Rcを10:1とし、5%~10%w/wのオルトケイ酸テトラエチルを混合して複合素材を成形したところ、PDMSと比較して混合素材表面の親水性が向上し、ペプチド溶液浸漬時の吸着量も増加した。また球状シリカゲルを5%~10%w/w混合した場合も同様の親水性向上が見られたが、アミノプロピル基を有する添加剤の場合は成形したポリマーの強度が弱く、重合反応時にアミノ基の影響があるものと考えられた。 カーボンナノチューブは凝集性が高いため、より均一な複合素材上への分散を目指して多糖類との混合による塗布を検討した。既知法としては水溶性キシランを用いる分散法が知られており、素材表面の改質と合わせて、ポリマー上へのセルロース塗布を行ない、細胞接着を指標として評価した。 セルロースナノファイバー(CNF)およびリグノセルロースナノファイバー(L-CNF)をPDMSに塗布して作製した素材表面に血管内皮細胞を播種して細胞培養を実施した。L-CNFを用いた場合において、血管内皮細胞の接着細胞数が増加した。PDMSの混合比や素材の弾性率による接着数への影響は見られなかったことから、素材表面の親水化およびL-CNFのメッシュ状構造体が接着性向上に寄与している可能性が示唆された。対照的に、CNFを用いた場合はプラズマ処理PDMSと同程度の接着数であり、細胞接着においてはL-CNFのほうがより有効であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初はポリジメチルシロキサン(PDMS)のプラズマ処理による素材表面の親水化を計画していたが、時間経過と共に表面の親水性が低下する傾向にあり、予定を変更してオルトケイ酸エステルや球状シリカゲルとの混合およびセルロース繊維の塗布を検討した。より安定的に親水性が持続する結果が得られたことで、素材作製の点からは進展があった。しかしながら、素材表面の種々の官能基化やLDI-MS感度の定量的データの取得はこれから行う予定のため、点検評価は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
シリコーンポリマーの表面改質は可能となったので、概ね申請時の計画に沿って、LDI-MS分析を中心に、リパーゼやペプチダーゼ酵素反応の解析を行なっていく予定である。 素材表面へのアミノ基導入は重合反応の際に検討を要するが、Rcの最適化など、ポリマー作製の反応条件検討で対応する予定である。表面の官能基修飾は添加物に由来するシラノールを足掛かりとすることで可能と考えており、セルロース繊維等の多糖導入も官能基化には有利に働く。 一方で、素材表面に多糖を有するLDI-MS分析プレートはこれまでに例がほぼ無く、レーザー脱離イオン化への影響が未知数である点が課題であるが、カーボンナノチューブとの混合比を変えることで検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部、消耗品の見積りよりも金額が安く納品されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗物品費(素材洗浄用の蒸留水購入)に充てる。
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