研究課題/領域番号 |
16K14045
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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研究分担者 |
渡部 綾 静岡大学, 工学部, 助教 (80548884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 触媒・化学プロセス / 温室効果ガス削減 / 再生可能エネルギー |
研究実績の概要 |
低炭素社会の構築にむけ,産業プロセス排出のCO2を物質変換し,その削減と資源化が求められている。本研究では,水素キャリアであるアンモニアNH3の分解で得るH2でこのCO2をCH4に変換し、得られたCH4とCO2のドライ改質により合成ガスを製造するプロセス構築を目的としている。平成28年度は、アンモニア分解用とCO2のメタン化用、そしてCO2とCH4のドライ改質用の各構造体触媒の創製とその特性評価である。今年度の研究実施で得られた成果を以下に示す。 1.NH3分解用構造体触媒:活性成分としてRuとNiを選定し、その担持量や担体する酸化物種の最適性を検討した。粒状タイプの触媒で調査し、Ru/Al2O3やNi/Al2O3、Ru/CeO2触媒が良好であり、中でもRu/CeO2触媒は低温側から高い活性を示すこと、KとCsの添加が分解活性を加速することを明らかにした。金属担持量の適正値は10wt%であった。そして、最適な触媒成分を付着したハニカム構造体触媒の調製に成功した。 2.CO2のメタン化用構造体触媒:Ni/CeO2構造体触媒の優れたメタン化活性をさらに向上すべく、構造体形状の最適化を検討した。構造体部を数段に積層したスタック形式や積層間にスペースを設けたセグメント形式が活性向上につながった。その要因は物質の拡散促進と伝熱促進が影響していることを明確にした。 3.CH4とCO2のドライ改質用構造体触媒:ゾル-ゲル法と無電解めっきの組み合わせで調製したNi/Al2O3系構造体触媒の改質特性と触媒寿命の向上を検討した。めっき工程における浸漬時間が重要であり、3分間が最適であることがわかった。物性測定から、めっき時のPd核と析出Ni成分との相互作用が活性向上と安定性に影響していることが推論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の実施項目としては,アンモニア分解用やメタン化用,ドライ改質用の各種構造体触媒の創製と特性向上,ならびに最適化をあげていた。この項目に対して,アンモニア分解では300℃以下の低温で文献報告値以上の性能を示す触媒を開発し、またそれを構造体触媒として作製することができた。メタン化反応では250℃~300℃の低温域で原料(CO2+4H2)供給量300~3000ml/minの厳しい条件下でも平衡転化率にほぼ近い活性をもつ,高活性なフィン型構造体触媒を創製することができた。構造体形状の最適化もセグメント形式が触媒活性をさらに高めることを明らかにした。そして、ドライ改質用の構造体触媒の調製ではめっき時間の制御が触媒活性と寿命に大きく影響していることも、既報にはない初めての知見として得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究実施内容については以下の通りである。 1.NH3分解用構造体触媒:昨年度に得られた知見をもとに、NH3分解用構造体触媒の機能性のさらなる向上化と機能発現の要因について検討する。具体的には,Ru/CeO2系を中心とした構造体触媒の機能性を、第二成分K,Csの添加量の最適化や触媒調製工程の最適化を検討することで触媒機能をさらに向上する。そして,各種の分析装置(SEM, TEM, XRD, EDX, XPS, BET, TPR, FT-IR,ラマン分析)を活用した物性測定を行ない、触媒特性の発現要因に関した検討を行なう。得られた情報を触媒調製工程に還元し,より高機能な触媒創製に向けた設計指針を検討する。 2.CO2のメタン化用およびCH4のドライ改質用構造体触媒:メタン化用構造体触媒ではセグメント形式構造体の活性向上の説明について、物質拡散と伝熱に着目した反応工学的な理論整理を検討する。また、ドライ改質用触媒における無電解めっきの浸漬3分間の最適性について、各種の分析装置を活用したさらに詳細な物性測定を行なう。そして、得られたデータをもとに反応機能の発現機構について評価し、また予測を立て触媒調製工程へとフィードバックを図る。 3.非平衡構造体触媒反応システムの作製:NH3分解用とCO2のメタン化用の各構造体触媒を用い、そしてPd-Ag系の膜分離管を作製して、H2相互利用型の非平衡構造体触媒反応システムを作製する。NH3分解とCO2のメタン化、そしてH2の膜透過速度に留意した実験条件を選定しつつ、作製装置のスタートアップデータを採取する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究推進における分担者への実施負担が、今年度は当初予測よりも小さくて完了することができた。そのため、分担者への予算配分が次年度に継続することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
分担者の実験実施の頻度が今年度は高まることが考えられる。繰り越した予算は分担者の研究実施の予算として使用する予定である。
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