研究課題/領域番号 |
16K14046
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
羽田 政明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344140)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メタン酸化カップリング / NO直接分解反応 / 活性点構造 / 触媒機能解析 |
研究実績の概要 |
新規なメタン酸化カップリング触媒の開発につながる知見を得ることを目的として、異種反応との活性点構造の類似性に着目した触媒設計指針の抽出を検討した。具体的には、メタン酸化カップリング反応において重要とされる塩基性に着目し、研究代表者が見出した塩基点が活性点として作用するNO直接分解反応(科研費22350068)との関連性について詳細に検討した。 NO直接分解反応に活性を示す酸化イットリウム触媒について、異なる方法(沈殿法、水熱法)および条件で調製することによる塩基性の制御を試みた。メタン酸化カップリング活性(メタン転化率、エタン/エチレン選択率)は同じ酸化イットリウム触媒であっても大きく異なることがわかった。CO2-TPDにより評価した塩基特性との関連性から、メタン転化率は塩基点の数(CO2脱離量)に、エタン/エチレン選択率は塩基強度(CO2の高温/低温脱離ピーク面積比)に依存することがわかった。またNO直接分解活性はメタン転化率と比較的良好な相関性があることを見出した。以上の結果より、触媒の塩基特性を高めることで高いエタン/エチレン収率の実現が可能な触媒設計指針を提案できた。そこで酸化イットリウムの塩基性を高めるため、バリウムの添加効果を検討したところ、バリウム添加量が10wt%までエタン/エチレン収率が向上する結果が得られ、本研究で見出した触媒設計指針の有効性を検証することができた。 メタン酸化カップリング反応における塩基点の役割を解明するため、酸素の活性化に着目し、18O2同位体ガスによる酸素交換反応を行った。その結果、塩基性が高い触媒ほど低温で酸素交換反応が進行することが明らかとなり、塩基点が酸素の活性化サイトとして作用している可能性を見出した。酸素の活性化を適切に促進できる活性点構造を構築できれば、さらなる高活性触媒の開発につながるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的反応とは異なる反応であっても活性点構造が類似していれば有効な触媒となり、従来とは異なる観点からの触媒設計指針の可能性を提案することが本研究のモチベーションである。本研究で取り組んでいるメタン酸化カップリング反応、NO直接分解反応とも理想的な触媒反応であるが、いずれも実用化はされておらず、触媒開発のブレークスルーを実現するためには新しい視点からの研究が必要である。本研究では、メタン酸化カップリング触媒の開発につながる知見を得ることを目的として、本年度は (1) 塩基性を制御した酸化物触媒の調製とメタン酸化カップリング活性とNO直接分解活性の相関性を解明するとともに、(2) 塩基点の役割として酸素活性化プロセスの重要性を明らかにする、という計画で研究を実施した。いずれの点についても計画通りに研究が進捗しており、次年度につながる新しい知見創出に繋がっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討によりNO直接分解反応に有効な触媒がメタン酸化カップリング反応にも有効であることを実証した。また更なる触媒性能の向上においては、反応の素過程である酸素活性化を促進することの有効性も明らかになった。そこで、次年度はNO直接分解反応における効果的な助触媒であり、かつ酸素の活性化能も有する酸化セリウムの添加効果について詳細に検討する。酸化セリウムはCe4+⇔Ce3+のRedoxが進行するため、高い酸素活性化能を発現するが、その性能が高すぎるためメタンからCO2への完全酸化反応の進行が懸念される。そこで、今年度も検討した酸化イットリウムへの酸化セリウムの少量添加の効果を検討する。具体的には、H2-TPRなどを活用して評価した酸素活性化能とメタン酸化カップリング活性(メタン転化率、エタン/エチレン選択率)との関連性を明らかにし、触媒活性向上に必要な触媒機能を解明するとともに、得られた知見に基づいた酸化イットリウム以外の金属酸化物の影響についても検討する。またin situ赤外吸収分光法を活用した吸着種の動的挙動の観察から、反応中間体生成に及ぼす活性酸素種の影響を詳細に調べる。以上の検討から得られた成果を整理し、高活性なメタン酸化カップリング触媒を創成するための触媒設計指針を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
18O2同位体ガスを用いた酸素交換反応の実施において、当初は実験精度を高くするため比較的速いガス流速条件での評価を想定していたが、ガス導入系を改良することにより、微小流量でも十分な精度で実験出来るようになった。複数の18O2同位体ガスの購入を想定していたが、上記の理由により手持ちの18O2同位体ガスで実験が実施できたことから、次年度使用額が生じた。また当初の想定通りに学会発表を行ったが、当該研究のための情報収集が可能なシンポジウムなどへの出席が想定通りではなかったことから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究はおおむね順調に進捗しており、次年度においては新たにin situ赤外吸収分光法による吸着種の動的挙動を観察する計画である。本計画は研究開始当初は想定していなかったことから、本実験に必要な石英製IRセルならびに温度調節器などを購入する予定である。また本年度以上に積極的なシンポジウム等での情報収集ならびに学会発表を実施する計画である。
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