昨年度までの検討により、メタン酸化カップリング反応における塩基点の役割は酸素活性化であることを明らかにした。今年度は、反応の素過程である酸素活性化の促進を狙い、NO直接分解反応における効果的な助触媒であり、かつ酸素吸放出能を有する酸化セリウムの添加効果を検討した。これまでの検討で担体としての有効性を見出している酸化イットリウムに酸化セリウムを添加することで、低温で酸素活性化能が大きく向上することを昇温還元測定(H2-TPR)により明らかにした。一方、メタン酸化カップリング活性としては、僅か3mol%の酸化セリウムを添加することによりエタン/エチレン収率が5.6%から10.2%まで大きく向上することを見出した。酸化セリウムは酸化イットリウムとの固溶体を形成しておらず、ナノ粒子として高分散している状態がメタン酸化カップリング反応に有効であることがわかった。H2-TPRにおいて低温(100~300℃)で活性化される酸素種の量とエタン/エチレン収率の間に良好な相関性が観察されたことから、酸化セリウム粒子表面の酸素種がメタンの活性化に効果的に作用し、エタン/エチレン生成に重要な役割を担うことが推察された。 本研究では新しい触媒設計の試みとして、異種反応との活性点構造の類似性に着目したメタン酸化カップリング触媒の開発を検討した。異種反応としては、研究代表者が見出した塩基点が活性点として作用するNO直接分解反応に着目し、酸化イットリウム触媒のNO分解活性とメタン酸化カップリング活性の相関性があること、NO分解反応に有効なバリウムや酸化セリウムを添加することでメタン酸化カップリング活性の向上が実現できることを見出した。以上のように、活性点構造の類似性から新規触媒の開発に繋がる知見を創出することができた。
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