研究課題/領域番号 |
16K14049
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小川 昭弥 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30183031)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フルオラス / リン資源 / リサイクル触媒 / 有機典型元素化学 |
研究実績の概要 |
研究計画に従って、本年度はリン原子上でのラジカル置換反応、循環機能を有するリン配位子の合成と触媒再利用を重点的に検討した。 高分子合成に多用されるリンカルボニル試薬を用いることで、フルオラスユニットを有する有機リン化合物の合成に成功した。Grignard反応による合成法では、高活性なリン原料 (Ph2PCl)が必要で、厳密な不活性雰囲気下での操作が必要であった。さらにスズ試薬を用いることで空気中で安定なホスフィンオキシドをリン源とすることが可能となった。これは、反応系中において少量ずつアルキルラジカルが発生するため、副生物である分離困難なフルオロアルケンを生じない。種々検討を重ねた結果、若干の加熱により良好な収率で目的のフルオラス有機リンが生成すること、またフルオラス溶媒 / 有機溶媒の二相系を用いて簡便に単離可能であることを見出した。 触媒金属の回収につては実用研究企業に相談したところ、このような配位子の回収の方が重要性が高いとのアドバイスを受け、フルオラス有機リン配位子の回収に取り組んだ。目的のフルオラス有機リンはメタノールに可溶であり、回収効率を向上させるため、反応終了後に副生するフルオラスホスフィンオキシドの回収を試みた。分液操作に用いる有機溶媒を検討したところ、メタノールに難溶であることが明らかとなり、フルオラス層を抽出し、還元による再利用の可能性について引き続き次年度以降に検討することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・エチレンスペーサーを有するフルオラスホスフィンの簡便な合成法を開発した。 ・副生物であるフルオラスホスフィンオキシドの除去および回収に成功した。 リン配位子を有する金属触媒は、高分子のモノマー材料をはじめ、医薬品合成など多様な用途に用いられる。また有機リン自体が試薬となることも多く、中でも方法のひとつがWittig反応である。しかしながら反応後に化学両論量のホスフィンオキシドが副生し、しかも分離が困難で、一般的にその除去に多大なコストを要することが知られている。 本年はこの問題を大きく改善したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って、次年度はフルオラス有機リンを配位子に用いる種々の有機金属触媒反応を検討する。 またこれに加えて、実用化に向けたフルオラス有機リンの再生についても検討する。
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