研究課題
再生水の滅菌プロセスにおいては様々な化学物質が産生される。これらは非意図的に産生されるため、明示的に認識されることが少なく、人の健康への隠れたリスクとなる。本研究年度中には、再生水中に産生されるホルモン様活性物質の生理活性を網羅的に発色判定し、潜在的な環境リスクを判別する分析法開発に関する研究を遂行してきた。まず、汚染水中の化学物質の生理活性を評価するために、本研究者が直接中国・清華大学環境学院に渡り、中国の実再生水サンプルから再生水中に産生された化合物サンプルを獲得し、その性ホルモン様活性・阻害性・催奇形性などを網羅的に発光計測した。その成果の一例としては、再生水中に産生された化学物質の一部は、女性ホルモン阻害性は弱いが、他の化合物質とシナージ効果を示すことが分かった。更に、汚染水の中の免疫毒性物質の一例である免疫毒性物質(ラパマイシン)を測定する新たな発光プローブを開発しアメリカ化学会(ACS)の雑誌に報告した。また、このホルモン様化学物質の生理活性評価を支える基盤研究も行った。例えば、発光基質に蛍光色素を繋げた新規発光基質類を多数有機合成し、青・緑・赤色などに発光する発光基質を開発した。その一部は、従来にない高輝度と安定性を示した。また、新しく開発した人工生物発光酵素(ALuc)類と特異的な発光輝度を示すことも確認できた。この成果もACSジャーナルに発表した。他にも本研究で目標とする「汚染水中の化学物質の生理活性」の高感度測定のために新たな人工生物発光酵素群を開発した。発光プランクトン(copepod)由来の生物発光酵素の配列データベースから頻度の高いアミノ酸をソフトウェア的に抽出して新たなALucを開発した。その一部の新規ALucにおいては、従来の天然の発光プランクトンやウミシイタケ由来の発光酵素より極めて明るい発光輝度を示すことが確認できた。
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