本研究は、耐熱性・耐環境性・耐薬品性・低熱伝導性・寸法安定性・耐摩耗性等に極めて優れた特性を有する酸化物材料の超高靭性化を実現するための基礎研究である。一般的にセラミックスをはじめとする酸化物材料は、上述した優れた特性を有しながら、破壊靭性つまり粘り強さが極めて低く脆いことから構造材料としての利用は著しく制限されている。一方、我々は混合導電性材料を中心に検討する中で電子状態をある条件にすることで破壊じん性が向上することを見出した。ただし、現段階においては飛躍的な靭性向上は期待できず、新たな方法論の構築が急務であった。そのような中、九州大の石原らが開発したナノポーラスNi-Feが我々の材料コンセプトと合致し、評価・検討ならびに靭性向上メカニズムの解明を行った。 本年度は、昨年度に引き続きナノポーラスNi-Feの応力ーひずみ変形挙動の詳細評価することでこれまでに得られた知見の再現性を示した。それにより粒子表面にできる無数のナノポーラス構造が延性化に寄与することを分子動力学を用いた計算科学アプローチによって示すことに成功した。また、我々が長年取り組んできた混合電子構造モデルについては、今後、Ce系、 Co系、Ni系、Fe系の材料についてより詳細に検討していく予定である。加えてじん性向上のみならず電気的特性、耐熱特性、耐衝撃特性、耐薬品生をはじめとする機能性に関しても今まで以上に検討し、世界に類を見ない超機能性セラミックスの創成を目指す。
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