研究課題/領域番号 |
16K14054
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
松下 祥子 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (50342853)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エネルギー変換 / 熱電 / 半導体 / 熱励起 / 光励起 / 酸化還元 |
研究実績の概要 |
申請時に報告させていただいたβ-FeSi2/銅イオン伝導体(CUSICON)を利用した600℃作動系において、窒素・真空雰囲気下でも35時間以上安定に発電し、さらに長期動作後のイオン伝導体内の酸化還元反応をXPSで確認することができた。酸化還元の際に銅イオン伝導体内に生成・消失する酸素が動作性能に影響を与えることも示唆された。ただし、このβ-FeSi2/CUSICON系は酸化還元能を確認するためにCUSICON内のイオン拡散能は低く作製されたものである。 また、本発電機構が第2種永久機関ではないかというご指摘に関し、国内の熱力学・電気化学の先生方とディスカッションを行った。最終的に、本系は第2種永久機関ではなく、全体が吸熱反応として作動し、かつ、セル内部に自発的に温度勾配が生じる系ではないかというご指摘をいただいた。現在、化学型ゼーベック電池との関連も含め、熱力学の議論を行っている。 この議論を行う上で最も有効であったのが、「増感型太陽電池を熱しても電流が得られる」という成果であった。今後、学術的には、この「光励起」と「熱励起」の同一性・違いに切り込んでいく。 また作動温度を低下すべく、80℃で作動する系に関しても検討しており、その過程でイオンの酸化・還元速度の調整が重要であることも判明した。 以上の成果をふまえ、本研究の基礎となった基礎出願番号 特願2015-175037に対し、PCT/JP2016/075856として、中国、台湾を含め国際出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に報告させていただいた600℃作動系において、窒素・真空雰囲気下でも安定に発電し、さらに長期動作後のイオン伝導体内の酸化還元反応をXPSで確認することができた。ただし、酸化還元の際に銅イオン伝導体内に生成・消失する酸素が動作性能に影響を与えることも示唆でき、現在論文投稿中である。 また、本発電機構が第2種永久機関ではないかというご指摘に関しては、まず、増感型太陽電池を熱しても電流が得られる」ことを有機ペロブスカイトを用いた太陽電池で示し、応用物理学会で発表した。現在、本実験結果を踏まえ、本系のエネルギー効率の計算方法を提唱する論文を作成中である。 また作動温度を低下すべく、80℃で作動する系に関しても検討している。熱励起電子による還元は確認できたが、酸化が確認できておらず、イオンの酸化・還元速度の調整が重要であることが判明し、日本化学会にて発表した。 以上の成果をふまえ、本研究の基礎となった基礎出願番号 特願2015-175037に対し、PCT/JP2016/075856として、中国、台湾を含め国際出願を行った。
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今後の研究の推進方策 |
この一年間で学術論文約4報分の結果が出ている。次の一年では、特に熱力学第2法則との関係に肉薄しながら、これら結果を論文として発表し、光励起と熱励起の学術の構築を行っていく。また、80℃で長期作動する実験系も構築し、産業への早い還元を意識する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はNEDO新エネルギーベンチャー技術支援事業に一年間のみご採択いただき、追加研究費が500万円あったため、次年度へ予算を回させていただきました。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に回させていただいた40万円弱は物品費および旅費に回させていただきます。
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