研究実績の概要 |
増感型熱利用発電は、化学系太陽電池と呼ばれる色素増感型太陽電池の光励起を熱励起に変換させた申請者独自のアイディアである。交付申請時には、熱電材料であるβ-FeSi2と銅イオン伝導体を用いて、600℃での発電を微量ながら確認した(2015年秋 熱電学会 講演奨励賞受賞、本研究期間にMater. Horiz., 2017, 4, 649-656.に掲載)。しかし銅イオンが酸化還元反応を伴いながらサイクル移動しているのか、どれくらいの電池寿命が得られるのかなどは不明であり、本研究概念の確認には至っていなかった。そこで本申請では、温度差不要の熱電エネルギー変換システムの構築が真に可能なのかを明らかにすることを目標とした。 その結果、現在では、(1)有機ペロブスカイトが光でも熱でも励起電荷を生み出す性質を利用し、光・熱両増感電池を作製し、本原理を実証(ACS Appl. Energy Mater., 2019, 2, 13-18.)、(2)体温から600℃までの発電を確認(一部、応用物理学会発表、知的財産出願3件。J. Phys. Chem. C20191231912135-12141)、(3)最長4カ月の継続的発電を確認、(4)放電後、熱源に置いておくと発電性能が復活(J. Mater. Chem. A, 2019,DOI: 10.1039/C9TA04060A) など、想定以上の結果を出すことができた。特に(4)に関しては、本電池が「熱源に埋めて、スイッチをオンオフするだけで、半永久的に使用できる」ことを示しており、新しい熱エネルギー利用の形を提唱できたと自負している。
|