研究課題/領域番号 |
16K14055
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
冨田 育義 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (70237113)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 高分子合成 / 合成化学 / 水素 / 金属錯体 / 多積層型高分子錯体 |
研究実績の概要 |
水素社会の実現には、安全に水素を貯蔵し、外部から大きなエネルギーを加えることなく必要に応じて円滑に水素を取り出すことができる新しい水素貯蔵技術が渇望されている。本研究では、軽量で安全かつ高効率な水素貯蔵材料としての期待から、従来には殆ど報告のない多積層(マルチデッカー)型の高分子金属錯体を、申請者らが報告してきた各種ヘテロール類を用いて創成し、これを各種元素や置換基をもつ配位子と種々の金属中心をもつ系へと展開し、得られる多積層型高分子金属錯体のレドックス特性、水素との相互作用等を総合的に評価し、多積層型高分子金属錯体の次世代の水素貯蔵技術への可能性を追求する計画で研究を推進している。 初年度は、2,5-位にトリメチルシリル基やフェニル基などの置換基をもつ1,1-ジフェニルスタンノールとリチウムとの反応により対応するスタンノリルジアニオンを調整し、このジアニオンと塩化鉄(II)、塩化コバルト(II)などとの反応を行い、多積層型高分子金属錯体の合成を検討した。その結果、それぞれ赤色、緑青色の不溶性の生成物を与えることがわかった。 また、ヘテロ元素を付与した配位子をもつメタロセン誘導体が炭化水素系のシクロペンタジエニル配位子をもつ場合と比べてどの様に電子状態が変化するかを評価するために、ヘテロ元素を配位子に付与した多積層型高分子金属錯体のモデル化合物の位置付けとして、ホスホール誘導体から誘導できるホスホリル配位子をもつ単層型のメタロセン錯体を合成し、それらの酸化還元特性の評価をあわせて行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は、新しい多積層型の錯体を主鎖成分とする金属含有率の極めて高い有機金属高分子の創製を行い、これらの水素貯蔵材料としての可能性を評価することにあり、特に、合成の報告がほとんどなされてこなかった多積層型錯体高分子を創製する部分が挑戦的かつ重要な位置付けになる。初年度の研究を通して、不溶性ながら目的の構造をもつと考えられる生成物が得られ、またヘテロ元素を付与した配位子をもつ多積層錯体のモデルとなる単層型の錯体の電子状態についても評価を行うことができた。さらに、ここで得られた結果から、本研究の指針の妥当性が支持できており、当初の計画に従い、順調に研究が進行しているものと判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、上述のヘテロ元素をもつ配位子の合成に用いる1,1-ジフェニルスタンノールの2,5-位の置換基を適切に分子設計することにより、可溶性の多積層型高分子金属錯体を得る可能性について検討を加えるとともに、様々なヘテロ元素を含む配位子系やチタン、ジルコニウムなどの前周期遷移金属などを中心金属とした錯体などへと合成を展開し、これらの一連の合成研究から得られる高分子の酸化還元特性および水素との相互作用などについて詳細に検討を行う計画である。
|