太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギーの有効活用を目的とした有機レドックス・フロー電池の開発に向け、正極用および負極用の有機活物質の研究を行った。まず、「溶媒を用いないレドックス・フロー電池」という新しいコンセプトを実証するために、昨年度および一昨年度に開発した室温で液体のキノン誘導体の各種基礎物性の測定および充放電試験を行った。高いエネルギー密度を実現するために、キノン誘導体と支持電解質を直接混合したものを正極液として用い、正極にはカーボンフェルト電極、負極には金属リチウム電極を用いた。その結果、可逆な充放電挙動が観測され、平均放電電圧は約3 Vと高い値を示し、サイクルを重ねても容量があまり低下しないことを見出した。この電池のエネルギー密度は、既存の水系のレドックス・フロー電池を大きく上回るものであり、液体の正極活物質を用いる優位性を示すことができた。また、両極に用いることのできる有機活物質を用いて充放電試験を行ったところ、約2 Vの平均放電電圧と可逆な充放電挙動は観測されたが、サイクルを重ねると容量が低下した。酸化および還元状態での安定性の向上が今後の研究課題である。以上のように、本研究では全有機レドックス・フロー電池の開発に取り組み、正極および負極用の有機活物質の開発を行った。正極活物質については非常に優れた材料を開発することができたが、負極活物質についてはサイクル特性の点で改善の余地がある。
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