研究課題/領域番号 |
16K14062
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 喜光 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (00531071)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コレステリック液晶 / 構造色 / 電気化学応答 / 電子ペーパー |
研究実績の概要 |
電子ペーパーとは、紙と同様の表示機能、即ち環境光からの選択的反射による発色、入力信号なしでの表示の持続、を電子的に実現することを目的とした新しいディスプレイである。液晶ディスプレイと比較してバックライトが不要な点や、書き換え時にしか電力を消費しないという点から、低電力駆動が可能であるため、次世代のディスプレイとして電子書籍や電子看板などへの広い普及が期待されている。しかしながら、市場に出回っている電子ペーパーは全て白黒表示であり、情報量の圧倒的な少なさは否めない。本研究では、コレステリック液晶が持つ「選択反射」を電場によって自在に制御することで、フルカラー電子ペーパーの新しい動作原理を開発することが目的である。開発した材料を用いて実際のデバイスまで展開していく予定である。 初年度である平成28年度は,これまでに我々が開発していたイオン性キラルドーパントの電気泳動析出に基づくコレステリック液晶の選択反射の変調および記憶という新しいシステムが抱える問題点(反射色の変化幅、応答速度)に関して、ドーパントのらせん誘起力を向上させるという方法を検討した。種々のドーパント構造を検討したところ、ホスト液晶と同じ分子モチーフをドーパントに導入した場合に高い螺旋誘起力を達成出来る事が明らかとなった。また、上記問題点を解決する方法として、酸化還元反応を利用した電解析出に基づく新しい原理による反射色変調デバイスの開発を目指して、酸化還元応答性をもつドーパントの合成にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
過去の報告から、ドーパントのらせん誘起力を高める方法としてホスト液晶分子と類似の構造を分子に導入することが知られている。これまで開発してきたビナフチル骨格をもつドーパントに対してホスト液晶である5OCBと類似の骨格を導入したところ、らせん誘起力が向上した新規なキラルドーパントを合成することに成功した。また、この研究の過程において、ビナフチル骨格の上下のナフタレンを結ぶリンカーによってもらせん誘起力が大きく変化することが明らかとなった。酸化還元能を有するドーパントに関しても合成を検討したところ、フェロセンを骨格にもつ新規ドーパントを合成することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新たに合成できたイオン性キラルドーパントを用いたデバイスの作製と電圧印加による反射色の変化について検討を行う予定である。また、フェロセンを導入した酸化還元応答性キラルドーパントを合成し、酸化還元反応を用いた低電圧駆動型の新しいコレステリック液晶デバイスの作製に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
強いらせん誘起力をもつ新たなドーパントを合成している最中、合成したドーパントのホスト液晶に対する溶解度が低いことが明らかとなった。これは、ナフタレン骨格のコンホメーション自由度に由来することが考えられる。そこで分子デザインをやり直し新たに合成する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越した額は新たにデザインしたドーパントの合成にかかる試薬・溶媒・測定機器およびらせん誘起力の評価のためのガラスセルの購入・測定機器に利用する計画である。
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