有機薄膜トランジスタ・有機薄膜太陽電池に代表される有機電子デバイスは、従来の無機材料をベースとするデバイスに比べて、軽量・フレキシブル・高意匠性などの点で優れているため、激しい開発競争が行われている。本研究では、これらの有機電子デバイスに利用が可能な新規なナノ材料を開発する目的で、多様な有機色素で修飾したシリコンナノシートを合成する手法を確立し、新規なナノスケールの有機電子材料の可能性を明らかにする。H29年度までは、芳香族アミン類と層状シリコン(Si6H6)との脱水素カップリングによって、様々な芳香族置換基をナノシート上に導入し、その電子的な特徴と光電変換材料への可能性を明らかにした。この成果をもとに、H30年度は、具体的に以下のように研究を展開した。 1.H29年度までに作成したシリコンナノシートに関して、トランジスタ材料としての応用を検討し、その可能性を明らかにした。 2.H29年度に新規に見出した白金触媒によるアセチレン類のヒドロシリル化によるナノシート合成の反応条件を検討し、良好な収率で効率よくナノシートを有機修飾する手法として確立した。この反応を用いて、様々なπ電子系置換基の導入を行った。得られたアルケン置換ナノシートの紫外可視吸収スペクトル、蛍光発光スペクトルになどの測定を行い、興味深い光学特性を明らかにした。この特性をさらに調査する目的で、モデル化合物の分子軌道計算を行い、光励起電荷移動などの可能性を示した。
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