研究課題
巨大な比表面積を実現するためには、相互貫入を防ぐことが重要である。そのために本研究課題では、有機化合物からなるビシクロオクタン様骨格を有するかご状分子を合成し、それらを連結することで、相互貫入を意図的に防いだ多孔性有機高分子を合成することを目的としている。本年度は、かご状分子の効率的合成法の検討および、連結基の導入を行った。連結基としては、アミノ基を導入することとした。アミノ基とホルミル基からなるイミン連結、あるいはアミノ基をアジド基に変換し、エチニル基との反応(クリック反応)を用いることを想定している。しかしながらアミノ基は反応性が高く、かご状分子を合成する段階では不活性な置換基を用いる必要があった。これまでは、ニトロ基を利用し、還元することでアミノ基に変換していたが、ジエチニル基が還元されてしまうという問題があった。かご状分子を合成する前に、ニトロ基をアミノ基に還元し、その後tert-ブトキシカルボニル(boc)基で保護する方法を採用し、現状の問題を回避することができた。現在、secondary corner unit(SCU)にアミノ基を導入したもの、およびtertiary corner unit(TCU)にアミノ基を導入した二種類のかご状分子の合成に成功しているが、連結しフレームワークを合成するためには数100mgスケールでかご状分子を得る必要がある。次年度はこれらのかご状分子のスケールアップおよび、これらを連結することで相互貫入を意図的に防いだ巨大な比表面積を有する多孔性有機高分子の合成を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、かご状分子を合成するための合成経路の最適化を行い、かご状分子を高収率で得ることに成功した。アミノ基をboc保護する方法を用いていたが、少量の水が存在すると塩基性条件であっても脱保護が進行し、副反応の原因になることを突き止めるのに多少の時間を要したが、現在では、高収率でかご状分子の合成手法を確立することができた。
今後は、合成した2種類のかご状分子について、最低数100mgオーダーでの合成を行い、酸加水分解によるboc基の脱保護および、アジド基の導入、さらにはかご状分子の連結による多孔性有機高分子の合成を行う。また、得られた多孔性有機高分子を超臨界CO2によるアクティベーションを行い、窒素吸着による比表面積の測定をおこなっていく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 9件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
ChemistrySelect
巻: 2 ページ: 259-263
10.1002/slct.201600065
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 55 ページ: 5184-5189
10.1002/anie.201511281
Dalton Trans.
巻: 45 ページ: 5676-5688
10.1039/C5DT04824A
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 23785
10.1038/serp23785
Chem. Rec.
巻: 16 ページ: 987-1016
10.1002/tcr.201500290
Chem. Sci.
巻: 7 ページ: 4329-4340
10.1039/C5SC04669F
Magnetochemistry
巻: 2 ページ: 21
10.3390/magnetochemistry2020021
Organic Electronics.
巻: 34 ページ: 23-27
10.1016/j.orgel.2016.04.001
巻: 7 ページ: 5108-5112
10.1039/c6sc01247g
Jpn. J. Appl. Phys.
巻: 55 ページ: 08NB16
Eur. J. Inorg. Chem.
巻: 2016 ページ: 3233-3239
10.1002/ejic.201600481
chemphyschem
巻: 17 ページ: 3423-3429
10.1002/cphc.201600804
巻: 45 ページ: 16644-16652
10.1039/C6DT01967F
巻: 45 ページ: 18417-18433
10.1039/C6DT03298B
Inorg. Chem.
巻: 55 ページ: 11782-11790
10.1021/acs.inorgchem.6b01870
巻: 55 ページ: 691-699
10.1021/acs.inorgchem.5b02107