磁石に応答する材料は、記録媒体、各種センサーや医療診断材料などに広く利用されている。機能磁性材料の作製にあたり、既存の優れた材料に磁性を付与する基盤的技術開発が重要である。既存材料に磁性を付与する方法としては、酸化鉄磁性粒子との複合化が一般的であるが、酸化鉄磁性粒子は黒褐色であるため、対象材料が濃く着色する。ランタノイド元素の1種であるホルミウムは、高い磁気モーメントを示し、着色がほとんどない。 本研究では、ホルミウムを介した3次元(3D)ポリマーネットワークに基づくポリマーを主体とする磁性複合材料の作製を行なった。ホルミウムを担持したポリアクリル酸からなる磁性ポリマーを調製し、基板上に構築した3D磁性ポリマーネットワーク層がネオジウム磁石に応答して収縮する現象を見出した。また、磁性ポリマーネットワーク層で被覆されたサブミクロンサイズのシリカ粒子は、溶媒に分散した状態で、ネオジウム磁石に応答して集磁できることが示された。さらに、内部に多量のホルミウムを導入することができるミクロンサイズのゲル材料をテンプレートとすることで、磁石の動きに対応して迅速に移動する磁性材料を得た。 本手法は、ホルミウムを介した3Dポリマーネットワークを使用するシンプルであるが斬新な手法である。本研究により、磁性材料の基礎研究のみならず、従来法では困難であった光学デバイス作製や色材としての応用などが飛躍的に進展することが期待される。
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