セルロースのイオン性液体による構造初期化を行い、その後の成形手法を開発し再生セルロース内のナノ構造制御および得られたセルロース材料の水処理膜および電気2重層キャパシタのセパレーターへの展開を行った。これまでに見出したセルロースのイオン性液体溶液へのメタノール蒸気によるゲル化手法を元に、中空糸およびナノファイバー化に関し検討を進めた。2重構造を持つノズルを用い中心にメタノールおよび外側にメタノール蒸気にセルロース溶液を晒したところ、内部に密なセルロース層をもつセルロース中空糸の成形に成功した。電子顕微鏡観察により得られた中空糸には内側および外側共に物理的な孔はなかった。しかしながら、中空糸の外側はほぼアモルファスであったのに対し、内側はわずかに結晶化のピークが得られたことから、溶液と蒸気の違いによってセルロース密度の異なる非対称性を付与できた。得られた中空糸の透水性評価を行ったところ、別手法で得られた再生セルロース中空糸と比較して透水量は若干低いものの、色素およびマグネシウムイオンの排除率に優れていることがわかった。さらに、ナノファイバー化と不織布化を行い電気2重層キャパシタのセパレータ部とての利用を試みた。キャパシタ性能の低下なく通常の不織布と比べ電解液の保持に優れていることを見出した。本手法は、イオン性液体を利用することによって天然資源であるセルロースを様々な形態に成形することができる。しかし、本研究を通じ得られたセルロース材料の耐環境性が課題であることがわかった。そこで、今後セルロースの結晶化の精密制御に研究を展開する。
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