研究実績の概要 |
平成29年度は、昨年度調製した単分散ポリ(4-n-アルキルスチレン)(炭素数n=1、2、3、4、6、8)試料に加えて、さらに7試料を追加合成し、合計40試料として各種物性測定を行った。 まず、得られた試料群を利用して、ガラス転移温度Tgのアルキル側鎖長依存性を評価した。アルキル鎖長が長くなるにつれてTgは低下することが確認された。これは運動性の高いアルキル基が側鎖に導入されることで、主鎖の運動性も高まり、Tgが低下するためと考えられる。 次いで、動的粘弾性測定を行い、粘弾性特性のアルキル側鎖長依存性について調査した。周波数分散測定から得られたデータを使い、時間温度換算則(TTS)に則って合成曲線の作成を試みたところ、得られた合成曲線の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”および損失正接tanδが測定領域内で滑らかに重なっていることから、TTSが成立していることがわかった。移動因子aTの温度依存性は、いずれもWLF型で記述でき、かつほとんど同じ依存性を示した。これは側鎖長が異なったとしても、温度に伴う分子摩擦の変化がほとんど同じであることを示している。さらに、各試料の絡み合い点間分子量Me (=ρRT/GNo)のアルキル側鎖長依存性を調べたところ(GNoはゴム状平坦部弾性率)、側鎖長が長くなるほどMeは大きくなることが確認された。これは側鎖にアルキル基が導入されていくことで嵩高さが増し、実質的に分子鎖が太くなって、絡み合いが生じ難くなっていく(Meが増加する)からであると考えられる。 さらに、ポリ(4-n-アルキルスチレン)類と1,4-ポリイソプレン(1,4-PI)とのポリマーブレンドの混和性に関する検討を行った。その結果、アルキル基がメチル基とエチル基の場合は相分離したのに対し、プロピル基以上では相溶していることが、DSC、ならびに光学顕微鏡観察により示された。
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