研究実績の概要 |
本研究は、ナノファイバーから構成されるバクテリアセルロース(BC)ハイドロゲルの水媒体が有機溶媒に置換できることに着目し、粘弾性相分離を利用した高分子多孔質体(モノリス)の作製技術と融合させることにより、ファイバーとモノリスからなる3D-3D多孔質複合材料の創製を目的とする。今年度はエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、酢酸セルロース(CA)などを用いた多孔質BC複合材料を合成し、得られた複合材料の作製条件による内部構造変化や異方性に着目した機械的特性について検討した。BCとEVOHの複合材料(BC-EVOH)の作製には、相分離溶媒としてイソプロパノール(IPA)/水を用いた。BCとCAの複合材料については、相分離溶媒としてDMSO/水を用い、さらに塩基性条件下でCAの加水分解を行うことで、BCとセルロース(CAOH)の複合材料(BC-CAOH)を作製した。BC-EVOHにおいて、IPA/水の溶媒組成および相分離温度によりBCゲル内部での相分離挙動が大きく異なることが見出された。IPA65%の場合、相分離温度による変化はなくEVOHがBCファイバーを覆うように相分離する様子が観察された。またIPA35%の場合、相分離温度により異なる挙動が見られ、20°Cの相分離条件ではIPA65%と同様にEVOHがBCファイバーを覆う様子が確認された。一方、4, -196°Cの条件では、EVOHがBCファイバーと独立した構造を形成する様子が観察された。このような相分離挙動の違いが見られた原因としては、BCとEVOHの間の水素結合やポリマー溶液の粘度の違いが大きな影響を与えると考えられる。またCAを用いて複合材料を作製した場合にはCAがBCファイバーを覆うように相分離する様子が観察され、加水分解したBC-CAOHにおいてもBC特有の内部構造を維持した様子が確認された。
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