研究課題/領域番号 |
16K14082
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木田 敏之 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20234297)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | セルロース / 環状オリゴ糖 / 分子認識 / ナノ空孔 / 包接 |
研究実績の概要 |
本年度はメチル化環状セロオリゴ糖の合成について検討した。合成は、①セルロースの水酸基の完全メチル化、②グルコシド結合の部分加水分解によるメチル化セロオリゴ糖の合成、③メチル化セロオリゴ糖の分子鎖末端の2つの遊離水酸基を利用しての分子内環化により行うことを考えた。 分子量約4万のメチル化セルロースを原料に用いて、水素化ナトリウム存在下、ヨウ化メチルと反応させることで完全メチル化セルロースを合成した。この完全メチル化セルロースのグルコシド結合をルイス酸存在下で部分的に開裂させたところ、グルコースユニットが2~10個(2~10量体)からなるメチル化セロオリゴ糖の混合物が生成した。この混合物をリサイクル分取HPLC(日本分析工業製、カラムの排除限界分子量:5,000、溶離液:クロロホルム、検出器:示差屈折率検出器)にかけて6~8量体のメチル化セロオリゴ糖を分離した(収率約10%)。このメチル化セロオリゴ糖の末端グルコースユニットの1位水酸基を脱離性基に変換し、分子内環化反応を行った。得られた生成物の質量スペクトルには、目的とするメチル化環状セロオリゴ糖に対応するピークが観測され、メチル化環状セロオリゴ糖の生成が確認された。また、上記のメチル化セロオリゴ糖の分子鎖末端の2つの遊離水酸基とイソフタロイルジクロリドあるいは2,6-ピリジンジカルボニルジクロリドとの環化反応により、新規なオリゴ糖―芳香族コンジュゲートが合成できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市販のメチル化セルロースから完全メチル化セルロースを収率90%以上で合成し、酸性条件下でそのグルコシド結合を部分的に加水分解することで、目的とする6~8個のグルコースユニットからなるメチル化セロオリゴ糖が低収率ながら合成できることがわかった。さらに、このメチル化セロオリゴ糖の両末端の遊離水酸基を利用することで、分子内環化が可能となることがわかった。以上のことから、当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
環状セロオリゴ糖の合成条件の検討と分子認識能の評価ならびに分子認識メカ二ズムの解明 1.環状セロオリゴ糖の合成法の検討 昨年度得られた知見をもとに、メチル化環状セロオリゴ糖ならびに未修飾環状セロオリゴ糖を高収率で合成する条件を検討する。 2.合成した環状セロオリゴ糖のゲスト分子包接能の評価 合成したメチル化環状セロオリゴ糖ならびに未修飾環状セロオリゴ糖の構造をNMRならびにX線結晶構造解析により明らかにするとともに、水中での種々のゲスト分子に対する包接能を評価する。ゲスト分子には、ベンゼン、ナフタレン、ピレンなどの芳香族化合物、ニトロフェノールなどの置換芳香族化合物、ヘキサン、デセンなどの直鎖炭化水素系化合物、さらにシクロへキサン、アダマンタンなどの脂環式化合物を用いて、各環状セロオリゴ糖との水中での会合定数をNMR, UV, または円二色性スペクトルにより求める。得られた会合定数を、対応するシクロデキストリンの会合定数とそれぞれ比較しながら環状セロオリゴ糖の包接能について評価する。また、1-フェニルエチルアミン、アミノ酸などの光学活性化合物をゲスト分子に用いて、環状セロオリゴ糖のキラル認識能についても検討する。 3.環状セロオリゴ糖―ゲスト分子包接錯体の構造解析と包接のメカニズム解明 分子モデリング、2次元ROESYスペクトルならびにX線結晶構造解析により環状セロオリゴ糖と種々のゲスト分子との包接錯体の構造を解析し、環状セロオリゴ糖の包接能との相関ならびに包接メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したために、当初の見込み額と執行金額は異なった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に変更はなく、前年度の研究費を含め、当初通りの計画を進めていく。
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