背景として、N-ビニルアミド誘導体をペプチド構造異性体として適用できれば、超安定かつ低毒性の一連の生理活性ペプチド異性体が合成可能となると考えられる。しかし、従来の合成法では、相当するアミノ酸異性体を得ることができない。そこで本研究課題では、N-ビニルアミド系モノマーの新規合成経路を開拓し、これをブレークスルーとして一連のN-ビニルアミド誘導体を合成することを計画していた。 そこでまず、抗菌性ペプチドの化学構造からデザインされたN-ビニルアミド系ポリマーの新規モノマーについて新規合成手法を確立することを目的としていた。さらに、これらのモノマーを用いて共重合体の高分子構造制御により、種々のN-ビニルアミド誘導体を合成し、これを超安定かつ低毒性のペプチド構造異性体を調製する新手法の開拓を目的としていた。 昨年度では、提案で示した新規合成経路を用いて、新しいN-ビニルアミド誘導体を合成することに成功した。とくに、オリゴエチレングリコール、長鎖アルキルや、フェニル基を簡便に導入して新しいN-ビニルアミド誘導体の合成を報告していた。 本年度は、昨年度から得られたN-ビニルアミド誘導体を用いて、実際に様々な共重合体を合成した。特にフェニル基を導入したN-ビニルアミド誘導体(A)、N-ビニルホルムアミド(B)との共重合体をA:B=90:10および80:20の組成比で調製し、これをアルカリ処理することでNVFに由来する部分を一級アミノ化して、部分的にカチオン性を導入した共重合体を合成した。さらに、ハロゲン化アルキルを用いて、1級アミノ基を4級アミノ基化した共重合体も合成した。 最後に、これら一連のN-ビニルアミド系ポリマーを用いて細胞接着試験および、細胞毒性試験を行うことによって、ペプチドの構造異性体に着目した非分解性の安全な抗菌性高分子材料としての評価を行った。
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