酸化亜鉛(ZnO)は約3.4 eVのバンドギャップエネルギーをもつn型半導体であり、多様な光学・電気・磁気特性を示すことから透明導電膜や色素増感太陽電池など幅広く応用が期待されている。また化粧品や医薬品としても用いられていることから、毒性がなく環境・生体適合性が高い材料である。デバイス設計においては、精密なナノ構造制御可能なボトムアップ手法が有用であり、特にナノロッドやナノワイヤーなどの一次元ナノ構造体は異方性や比表面積の観点から他の次元構造体にはない特長を示す。表面濡れ性制御もまた、材料設計において重要な位置付けである。特に異方的な濡れ性を示す動植物は多数存在し、それらを応用する試みが行われている。なかでも、表面座屈を誘起して得られるストライプ状の微細凹凸構造(リンクル構造)は簡便に異方構造を作製できる手法である。曲率構造を有しており、そのリンクル溝内をマイクロ流路としても活用できる。しかしながら、リンクル1波長分の表面修飾や形状制御を積極的に行う研究例は少ない。 今年度は傾斜蒸着を取り入れ、低温液相プロセスによりZnOナノロッドアレイをリンクル片面に位置選択的に構築し、ロッド成長時間の違い等における異方的な表面濡れ性を検討した。 PDMS基板を伸張しながら、短時間のプラズマ処理を施し、銀蒸着を行った。その後伸張を解放することによりリンクル構造を構築した。この作製した構造を別のPDMS基板に転写し、傾斜蒸着法を施すことにより、リンクル構造の片面に金属を蒸着させた。その後、低温液相プロセスにより、金属が付着したリンクル構造の片面から選択的にZnOナノロッドアレイを成長させた。作製した構造についてSEMを用いて表面・断面解析を行った。また、濡れの異方性について動的及び静的触角測定を行い評価した。
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