前年度において解析した小粒径のルチル型酸化チタン(粒径:13 nm)をもちいる反応系について,集光光源であるNSL(エヌエスライティング)光源および非集光光源であるHMP(浜松ホトニクス)光源照射下における検討をさらに進め,実照射面積で割り付けた光強度(W cm^-2)を使用すれば光源のちがいによらず解析できることを確認した.2種の電子受容体(ヨウ素酸イオン[IO3^-],鉄(III)イオン[Fe^3+])のいずれの場合でも,しきい値である光強度をさかいに低光強度領域では反応速度が光強度の二次,高光強度領域では一次の依存性をしめし,それぞれの近似曲線が実際の結果をよく再現した.得られた二次の依存性より,光触媒酸素生成反応が量論反応である4電子移動反応(+ 1.23 V)ではなく,2電子移動反応(+ 1.23 V)により進行していることが強く示唆された.一方,IO3-を電子受容体とするN小粒径のアナタース型酸化チタン(4.4 nm)をもちいる反応系において,低強度領域では,ルチル型と同様に光強度にたいして二次から一次へ光強度依存性の次数の変化が観測された.さらに約270 mW以上の高光強度領域では,四次の依存性に相当する高次の依存性が観測された.これは,移動電子数が2から4に変化するためで,これまでに観測されたことのないデジタル制御の速度式に支配されることが示唆されたと同時に,化学の世界ではじめて見られたシンギュラリティ(特異点=現象を表す関数がなめらかに変化しないこと)であると考えられる.
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