研究課題
「固体電解質に電圧を印加すると、固体内のイオンはどのように再分布するのだろうか?」この課題は固体電気化学における最も重要な問題でありながら、実験的な証拠はこれまで無いに等しい。そこで、本研究では、この問題に対して、明確、かつ、定量的な回答を得ることを目標とする。本研究は、全固体Li電池の「固体電解質/電極界面において、いかにして高速なイオン伝導を実現するか」という重要な課題解決と直結している。具体的には、Liの固体電解質に電圧を印加しつつ、ラザフォード後方散乱、核反応分析法(NRA)によって、Li濃度の深さ分布を測定した。「電圧を印加しながら」がポイントであり、深さ数10 μm(NRA)までの測定範囲で、Li濃度分布の電圧依存を計測したところ、Liイオン濃度分布がバルク領域とは異なる範囲が8 - 10 μmオーダーに及ぶことがわかった。そして、固体内部のLi分布が電圧によって大きく変化することを明らかにした。さらに、電気化学インピーダンス測定と組み合わせて解釈を行ったところ、固体内で固体電解質が分解し、Li濃度が数十パーセントも変化することを明らかにした。このように固体内部におけるLiイオン分布を明確化したところに意義がある。
2: おおむね順調に進展している
固体内部のLi分布について計測に成功し、かつその解釈もすることができたため、概ね順調に進展していると判断できる。さらに、課題も明確になってきた。μmオーダーでの挙動が分かってきたが、界面近傍のnmオーダーでのLiイオン分布については解決する必要がある。
電圧に応じたLiイオンの再分布を理解することを目指し、中性子線回折法を活用する予定である。固体電解質に電極を形成した構造だけではなく、全固体Li電池を作製し、それを動作させながら中性子線反射率を測定する。それによりnmオーダーの空間分解能で、界面近傍のLi濃度分布を計測する。
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