研究課題/領域番号 |
16K14093
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
片田 直伸 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00243379)
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研究分担者 |
辻 悦司 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80610443)
菅沼 学史 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90731753)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゼオライト / マクロポーラスアルミナ |
研究実績の概要 |
当初計画より予算が減額されているので無機合成に用いる機材が当初計画より少なく、以下の実験には予想より時間を費やした。 アルミニウム基板をシュウ酸溶液中で二段階アノード酸化し、クロム酸リン酸水溶液中でポアワイドニングをすることでマクロポーラスアルミナ皮膜を合成した。この方法で高い規則性を持つマクロ細孔が得られることがわかった。 一般的なゼオライト合成条件(pH11程度)ではアルミナ皮膜が溶解してしまう。そこで報告例のあるフッ化水素酸や濃塩酸を用いて種結晶溶液のpH調整を行った。フッ化水素酸ではポーラスアルミナ皮膜が溶解したのに対し、濃塩酸では溶解せずポーラス構造が維持された。また、結晶性の高いゼオライトが合成できる条件は種結晶溶液のpHが8以上だということもわかった。 ゼオライト合成をしたポーラスアルミナ皮膜の表面SEM像から、同一アルミナ皮膜でも細孔内に生成物が入っていない部分と入っている部分が存在した。円形の細孔内では、10 nm程度の微粒子生成物が見られ、皮膜上にZSM-5ゼオライト特有のコフィン型粒子も見られた。一方皮膜のごく一部にはポアワイドニングがより進行した六角形の細孔が見られ、この細孔内では細孔壁に沿うようにリング状の生成物が見られた。シュウ酸中でのアノード酸化では、ポア壁の内側部分に不純物としてシュウ酸イオンが取り込まれることが知られている4)。六角形細孔ではこの不純物含有層が完全に溶解しており、シュウ酸種の有無などによる形態の変化が示唆される。 以上のように、マクロ細孔にゼオライト前駆体が入り合成が進行するには,アルミナの洗浄が重要であることまではわかった。 一方理論計算によって圧縮力がゼオライト骨格が負電荷を帯びた状態(アニオンフォーム)の安定化をもたらし,これが酸強度を強めること,圧縮とは別にねじれが異なる化学的特徴を制御することなど大きな進展が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
円筒状・貫通孔を持つポーラスアルミナの調製の検討に手をつけられなかった.ただしこれらは平板状のポーラスアルミナで代替できるかもしれず,必須ではない. 平板状のポーラスアルミナの合成は計画通り進捗した. アルミナ被膜の形態維持とゼオライトの合成を両立させる条件は予想より狭く,明らかにするのに時間を要した.しかし明らかにすることができた.マクロ細孔内でゼオライトが合成できる条件は明らかとなったが,まだ全ての細孔内にゼオライトを有する試料は得られていない. 以上,当初の計画に比べると遅れている部分はあるが,予想通りではない発見のためであり,予想通りではない点に対しては適切に対処しており,ポーラスアルミナのマクロ細孔内でゼオライトを合成する指針は確立できた. 一方予定しなかった理論計算による成果で力による制御が二次元的に可能であることが予測され,新しい計画に繋がる可能性が出てきた.
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今後の研究の推進方策 |
円筒状・貫通孔を持つポーラスアルミナの調製は検討するが,研究計画を少し修正し,より重要な,マクロ細孔内でのゼオライト合成に注力し,洗浄方法を検討することなどによって平板状のポーラスアルミナの全面にゼオライトを修飾した試料を得る.これだけでも新規性が高い. つぎには予定にしたがい,ゼオライトを圧縮したときの性質の変化を調べる.方法としては酸性OH基のIR測定と指示薬の変色が第一に有望であるので検討する.
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