研究実績の概要 |
本研究はリチウムイオン二次電池の正極・負極の両者に分極アシスト機構を導入することでLiイオンの界面電荷移動・バルク拡散速度を相乗効果的に高め,高速充放電性を付与することを目的としている.正極にはこれまで開発したチタン酸バリウム系強誘電体を人工界面として導入した複合活物質を用いた.負極は,炭素に対して電気陰性度の異なる種々のヘテロ元素を置換した酸化グラフェンを用いた.本年度は負極材の開発を中心に行った. まずはハーフセル評価により良好な高速充放電特性を示す修飾型酸化グラフェンを探索した.結果,酸化グラフェンと尿素を混合・加熱して作製した窒素ドープグラフェンが,1Cレート(372mA/g)において容量600mAh/g以上,100Cレートの超高速充放電においても120mAh/gを維持できることがわかった. 続いて,上記複合正極と窒素ドープグラフェン負極を組み合わせて,フルセルを作製・評価した.まず未処理LiCoO2を正極に,開発した酸化グラフェンを負極に用いた場合,Cレートが2C, 5C, 10C, 20Cと大きくなるにつれて,容量はそれぞれ120, 70, 30, 10mAh/gと低下し,50C以上では充放電容量は殆ど得られなかった。また,強誘電体複合正極と通常黒鉛を負極として用いた場合も同様に50Cにおいて殆ど充放電容量は得られなかった.一方,強誘電体複合正極と窒素ドープ酸化グラフェンを負極として用いた場合,50Cにおいても50mAh/gの充放電容量が維持されることが分かった.つまり,本研究で開発した窒素ドープ型グラフェン負極と強誘電体複合正極を組み合わせることにより,相乗効果的に電池出力特性を改善できることが明らかとなった.
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