研究課題/領域番号 |
16K14095
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
中戸 晃之 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (10237315)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ材料 / ナノシート / 液晶 / 構造色 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、無機層状結晶を剥離させたナノシートが形成するナノシート液晶に、角度依存がなくかつ色変調可能な構造色を発現させることである。本研究では、ナノシート液晶の相分離を利用して、構造色を発現する液晶相を等方相に内包した構造を形成させ、角度依存のない構造色の実現をめざす。 平成28年度は、種々のナノシート液晶を調製し、それらの構造色発現を調査するとともに、系の相挙動を調査した。その結果、ニオブ酸ナノシート液晶が液晶相―等方相2相共存状態で構造色を示すことを初めて見出した。また、リン酸アンチモンのナノシート液晶が、Gabrielらの報告どおり構造色を示すことも確認した。このナノシート液晶は、有機の剥離剤を含まないため、今後予定している粘土など他の成分と混合させた多相共存系構築に適している。 ニオブ酸、リン酸アンチモンのナノシート液晶とも、構造色発現にはある程度以上のナノシート濃度が必要であった。これは、構造色の原因となる液晶相がある程度以上の体積分率を占めないと、系全体として明確な色を示さないことを意味する。 反射スペクトル測定では、肉眼で観察される色に対応する波長に反射ピークが観察され、構造色がBragg反射に由来することを示している。ただし、X線小角散乱から求められる底面間隔との対応がまだついていない。また、2種類のナノシート液晶を比較すると、リン酸アンチモンナノシート液晶の方が反射ピークが狭かった。これは、構造色が肉眼でより明確に観察されることと対応し、小角散乱でより規則性の高いラメラ相の形成が認められることと一致する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のナノシート液晶において構造色を確認できた(初めて構造色を観察できた系も含む)ため、順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に、ニオブ酸やリン酸アンチモンのナノシート液晶において、構造色を発現する条件を見出した。平成29年度は、この状況を承けて、ナノシート液晶の構造色スクリーニングを継続するとともに、液晶の相挙動との関連を調査する。さらに、液晶相を形成するナノシート種に他のナノシート種を混合した2成分系を調製し、相分離様式を確認するとともに、構造色の発現を観察する。 平成30年度は、液晶への電場印加による色変調を実現する。液晶に交流電場を印加し、シート面間隔(Bragg反射)の変化を誘起し、色を変調する。液晶の電場応答の際に生じるナノシートの粗密の変化を利用して、シート面間隔も変化させ、構造色の電場によるスイッチングの実現をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
この年度の目的は構造色発現のスクリーニングでその目的はほぼ達した。一方で、当初予算では、構造色評価用の光学部品類を購入する予定であったが、最適な評価法の検討に時間を要し、次年度に繰り越した。また、旅費については、成果発表として他の研究課題と合わせての招待講演が多く、関連する他の研究費を使用するなどしたため、予定より少額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の進捗により、当初予定とは異なる物品の購入も検討しており、それらにより消化する予定。
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