研究課題
研究の目的:次世代デバイスの有力候補とされている分子エレクトロニクス材料は、従来のシリコンデバイスでは到達し得ない高集積化や高機能化が期待されている。そこで本研究では、分子特有の機能をエレクトロニクス材料に組み込むことで、新しいタイプの分子トランジスタの創出を目指した。本研究の達成により、既存の電子素子の常識に捕らわれない「分子デバイスのみが到達可能な新しい領域」を提案できるものと考える。実績の概要:平成28年度は、電子受容性イオンの導入に成功していることから、平成29年度は電子供与性イオンの導入および電子供与性・受容性イオンの繰り返し注入について実験し、トランジスタとしての性能を評価した。まず、電子供与性イオンの一つ考えられるCo2+イオンへの固相イオン交換を行った結果、EPMA測定及びICP発光分光分析より、結晶中のLi+イオンが水溶液中のCo2+イオンと交換されたことを確認した。また、赤外スペクトル(IR)及び紫外可視スペクトル(UV)スペクトル測定から、電荷移動に由来するCTバンドがUV領域からIR領域にシフトしたことが示唆された。実際に、Co2+交換体の直流比抵抗を測定したところ、室温での比抵抗が7桁低下していた。次いで、Co2+イオンに交換した後、電子受容性のCu2+イオンへの交換を行った。EPMA測定の結果から、コバルト及び銅のどちらのイオンも結晶中に含まれていることが確認された。また、この試料について直流比抵抗の温度依存性を測定したところ、室温での比抵抗が1桁上昇していた。この結果は、固相イオン交換による電気伝導度スイッチングの足掛かりを得たことを示している。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (35件) (うち国際学会 2件、 招待講演 16件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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