研究課題
本研究課題は,永久双極子をもつ有機半導体分子の向き(配向)の最適化により,電荷の流れを最適化した高度な有機デバイス設計の実現に挑戦するものである。有機ELなど現実のデバイスに用いられる機能性有機半導体材料の多くは電気双極子や電気四重極子をもつπ共役分子の凝集体(固体)であり,その分子そのものの光・電気特性の配向依存性や,周囲の分子との相互作用による影響を理解し,その知見に基づいて分子間の相互配向を構成することが可能になれば,デバイスの動作効率の向上につながることが期待される。平成30年度には,研究分担者らと共同で,いわゆる第3世代有機EL材料として期待される熱活性化遅延蛍光(TADF)分子の発光特性に関する研究を進展させ,溶液の凝固に伴う発光の活性化,すなわち,取り巻く溶媒分子の配向が変化することによりTADF分子の発光特性が強い影響を受けることを明らかにした[原著論文1件]。透明電極の処理のために導入したUVオゾン洗浄改質装置を用い,実デバイス特性評価に関する試行的研究にも着手している。加えて,デバイスに用いられる分子固体膜の形成過程を分子レベルで明らかにし,さらに分子配向の揃った固体膜の電子機能性を利用する道筋を開拓することを目的に,有機半導体単結晶基板上における有機分子ヘテロエピタキシャル接合の形成メカニズムおよび電子構造の精密分析も進めている。当該年度には,高移動度p型有機半導体として知られるルブレン単結晶上へのn型分子C60の高秩序エピタキシャル成長 [原著論文1件],さらにペンタセンの単結晶表面上にエピタキシャル成長させたn型フッ化ペンタセン分子の分子間バンド分散[原著論文1件]の実証に成功し,新たに導入した紫外線レーザーの利用により,従来は困難であった広ギャップ有機半導体単結晶の価電子バンド構造についても実測への足掛かりを掴みつつある[国際学会1件発表受理]。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件) 備考 (2件)
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