研究実績の概要 |
まず、新しいナノスケール電位分布計測技術の開発を目的とし、高空間分解能(サブナノメートル)を有するヘリウムイオン顕微鏡(HIM)を用い、全固体リチウムイオン電池を積層型セラミックコンデンサ(MLCC)の両端電極に接続し、電圧印加を行ったMLCC断面からの二次電子(SE)放出を検出し、アクティブ電圧コントラスト画像化を行った。電位を定量的に評価できるケルビンプローブフォース顕微鏡測定からの接触電位差画像化と組み合わせ、新しい電位分布計測手法の開発を行うことができた。[C. Sakai et al., Appl. Phys. Lett. 109 (2016) 051603.]。 次に、HIM装置の外から試料に任意の電圧を印加可能にするため、高真空特性評価用電圧導入端子挿入機構をHIM装置に組み込んだ。切断後、機械研磨により平滑平面を得たMLCCの両端電極に0.5 Vから5 Vまで0.5 Vステップで電圧を印加し、MLCC断面のSE像を取得した。印加電圧0 V, 0.5 V, 1.0 V, 1.5 Vの時の内部電極間の誘電体領域の電位分布の勾配をグラフにプロットしたところ、印加電圧に比例して勾配が大きくなった。印加電圧が1.5 V以下の際、SE像に電位を反映したアクティブ電圧コントラスト像が観察できることがわかった。大変大きな成果と考える。 デバイスへの応用実験として、固体電池ではなく、試料提供をして頂け、フィードバックを行いやすいぺロブスカイト太陽電池を試料として使用した。断面を得る際、窒素ガス中で破断後、試料が大気に触れることなく、HIMチャンバーへ導入できるシステムを構築した。種々の破断方法を試み、全ての膜の破損無く、断面を得ることに成功した(HIMを用いて観察)。これらの研究成果を依頼講演、国際会議、国内会議で発表を行った。電圧印加機構を用いた電圧印加実験を実施済みである。
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