新しい熱電変換材料として注目される導電性高分子PEDOT:PSSについて、その高出力化を阻む金属電極界面での高い固有接触抵抗を従来の値の1/10000にするための、電極界面の評価技術確立、構造設計・接合技術改良に取り組んだ。29年度は、前年度に確立したPEDOT:PSSと金属電極の固有接触抵抗の測定技術を活用し、固有接触抵抗を低減する3つの方策、(1)PEDOT:PSSと電極の界面劣化防止、(2)単分子膜等の中間層挿入による接触改善、(3)電極金属の表面構造の制御による接触面積の最大化、等に取組んだ。 方策(1)では、銀ペーストをPEDOT:PSS上に塗布する前にPEDOT:PSS表面を洗浄して余分なPSSを除去した上で、さらなる劣化防止のために適切なプレス処理を施したところ、固有接触抵抗は従来の値の1/1000以下である1000マイクロオーム平方センチメートル以下のデータが得られた。この結果が出た当初は再現性が良くなかったが、ペースト塗布や計測用電極の改良により、本研究終了直前で再現性を得ることに成功した。方策(2)では、単分子層の成膜によるPEDOTの仕事関数制御を試みたが、再現性のある明確な低減効果は表れなかった。また方策(3)では、真空蒸着法による凹凸のあるAu電極よりも、単結晶Au電極の方が固有接触抵抗が半分程度に小さくなる結果を得た。同時に、蒸着したAu電極薄膜にレーザー光を照射して表面を平坦化できることを見出したことから、この技術を用いて固有接触抵抗の低減を試みたが、単結晶Au並みの値はまだ得られていない。 以上のとおり、期間終了直前に得た、固有接触抵抗を従来の値の1/1000以下に削減した成果は大きく、論文投稿準備を間もなく完了する。また、副次的な成果として得られた、レーザー光照射によるAu電極表面の平坦化技術は、知財化・用途開発を検討している。
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