研究課題/領域番号 |
16K14106
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
島田 悟 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (10357204)
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研究分担者 |
阿澄 玲子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 副研究部門長 (40356366)
周 英 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (80738071)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 透明導電膜 |
研究実績の概要 |
本年度は、水溶性高分子を分散剤とし、改良直噴熱分解合成法(enhanced Direct Injection Pyrolytic Synthesis method)で得られた高品質の単層カーボンナノチューブを用いて、高粘性CNT分散液を作製した。得られたカーボンナノチューブ分散液をドクターブレード法によりガラス上へカーボンナノチューブ薄膜を作製し、光照射及び有機溶剤への浸漬処理により、絶縁性の水溶性高分子を除去し、透明導電膜を作製した。昨年度に見出した新規ドーパントの中で、金属イオンがないヨウ化アンモニウム(NH4I)のドーピング効果を重点的に検討し、ドーピングのメカニズムの解明を行った。AFMやSEMなどの電子顕微鏡を用いて、interconnected カーボンナノチューブの複合膜の微細構造を観察した。また、FTIR、RAMAN、XPS、UV-visなど様々な分光法を用いて、カーボンナノチューブ複合膜の構造解析により、NH4Iのドーピング効果について解析した。NH4Iの膜厚や光照射のパラメータの最適化により、透過率84%に対して84Ω/squareという硝酸処理と同程度の世界最高水準のカーボンナノチューブ透明導電膜が得られた。さらに、85℃と85%湿度の高温高湿環境加速試験においても、高い導電率を維持することを確認した。本技術の実用性が高いため、論文発表の前に特許1報を出願した。論文はにJJAPにアクセプトされ、今年中に掲載される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNTの導電率を向上させるため、NH4Iという新しいドーパントを発見した。 また、これまで、CuI、CuBr、CuCl粒子と複合化させる研究で、光照射処理によりハロゲン化銅が還元され金属Cuとなり、interconnected CNT複合膜の導電率の向上に寄与しているのではないかとの推測があったが、本研究により、金属成分が入っていないNH4Iも同様に導電率の飛躍的な向上に成功した。また、NH4Iは元々水に溶けるが、光照射後は水に溶解しない上に、紫外線にも強い耐性を示した。また、85℃と85%湿度の高温高湿環境加速試験においても、高い導電率を維持することを確認した。CNTおよびグラフェンなどのナノカーボン材料の新しいドーパントやドーピング技術を見出していく方向性も確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これらのドーピング技術を用いて、伸縮センサーを作製する予定である。ドーパントの種類やネットワーク構造とセンサーの性能の関係について議論する。また、ドーピングなどの後処理が不要な新規CNT分散・ドーピング技術も開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
特許出願のために、論文掲載は予定より遅れたので、論文掲載料は次年度に支払うことになる。
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