研究課題
本年度は、分散剤として、これまで研究してきたヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の代わりに、ポリアクリル酸(PAA)用い、カーボンナノチューブ(CNT)の分散液および透明導電膜を作製した。PAAは分散剤としてだけではなく、導電性を向上するためのドーパントの機能も併せ持つことが期待される。そこで、PAAの分子量や濃度とCNTの分散やドーピング効果の相関を検討し、CNTの最適な分散プロセスやPAAを用いたInterconnected構造の構築について重点的に探索した。その際、原子間力顕微鏡(AFM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、CNT-PAAの複合膜の微細構造を観察した。また、赤外線吸収スペクトル(FTIR)、ラマン散乱スペクトル(RAMAN)、X線光電分光法(XPS)、紫外―可視吸収スペクトル(UV-VIS)など様々な分光法によりPAAのドーピング効果についても解析した。その結果、透過率85%において、シート抵抗60Ω/squareという世界最高水準のCNT透明導電膜を得られた。さらに、温度85℃、湿度85%の高温高湿環境加速試験においても、高い導電率を維持することを確認した。今回開発した技術は、後処理工程が「塗布膜の乾燥」だけなので、高品質な透明導電膜を簡単かつ効率的に製造できる。また、強酸や熱処理に弱いプラスチック基材上にも高品質なCNT透明導電膜を成膜できるため、幅広い分野での応用が期待される。
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Nanoscale
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Japanese Journal of Applied Physics
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