研究課題/領域番号 |
16K14108
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
燈明 泰成 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50374955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 音響共鳴現象 / 環境モニタリング / 気体種別 / 温度 / 圧力 |
研究実績の概要 |
1.音響共鳴現象の理論モデル構築 反射板裏面の薄層と外環境とが接した状態において、反射板の表面から水を介して広帯域超音波センサにより超音波を送信し、反射板裏面で反射した裏面エコーを再びセンサで受信する超音波伝達系を取り扱い、薄層の厚みが送信する超音波の波長に対して十分薄い場合には反射板/薄層/外環境界面における音波の反射率が周波数依存性を示すことを考慮し、当該裏面エコーの周波数スペクトルと位相スペクトとを算出する理論モデルを構築した。さらに薄層がある場合とない場合の裏面エコーの周波数成分の変化から未知数である外環境の音響インピーダンスを算出可能にした。 2.音響共鳴反射板の試作 半導体製造プロセスで使用されるレジストを薄層の材質とし、シリコン基板にレジスト膜を形成して音響共鳴反射板を試作した。共鳴周波数が膜厚に依存することを考慮して様々な膜厚の音響共鳴反射板を試作し、最終的に実験に使用する超音波探触子に適した膜厚で、比較的大きなレジストの音響インピーダンを有する音響共鳴反射板を得ることができた。 3.気体種類判別の試み 音響インピーダンスが気体の密度に関連することを利用して気体の種類を判別するために、裏面の外環境を空気として音響共鳴現象を観察したところ、振幅スペクトル比は共鳴周波数近傍において敏感に変化した。これは空気の温度変化に起因したものと推察され、本手法により極めて高感度に気体の状態変化が検出できる可能性が示された。そこでより定量的に温度変化を与えやすい水を外環境とし、温度が異なる水の音響インピーダンスを測定したところ、10~25℃の温度変化に対して音響インピーダンスは明瞭に変化した。以上の知見を踏まえて、外環境に様々な気体が充填でき、気体の状態を変えることができる気体チャンバを設計し、検証のための実験系を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載のとおり、申請時に計画した研究を遂行し、音響共鳴現象を利用して外環境の音響インピーダンスを測定するための理論モデルを構築すると共に、検証実験に使用する音響共鳴反射板を試作し、また気体チャンバを設計するなど、進展は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
構築した理論モデルと実験系を駆使して気体の温度変化や圧力変化がモニタリングできるか否かを検証すると共に、得られた成果を集約して高感度な環境モニタリングを実現する新しいセンサを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(709,200円)は今年度に試作を予定していた気体チャンバの自由度と機能性を向上させるために実験を追加して新たに設計し、これを次年度に試作することとしたこと、および今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求額と合わせて、気体チャンバの試作等、平成29年度の研究を遂行するために使用する予定である。
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