研究実績の概要 |
高強度・高弾性率の繊維強化複合材料(FRP)は, 航空宇宙など幅広い分野に普及し使用されている. しかしFRPは, カーボン繊維などに樹脂を含浸・成形するため, 繊維軸方向の圧縮強度と引張強度の比は0.1~0.5と低い.飛行機などの構造材では曲げ荷重に耐えるために圧縮変形部に繊維を多用して補強しているが、引張り強度の低下を招く.このトレードオフの関係の改善が求められている. 本研究では,強化繊維束(フィラメントヤーン)をカバリング補強して, FRPの圧縮特性を格段に向上させる手法を提案する. 圧縮強度が大きいFRPを実現するために, 弾性率が大きい繊維を巻きつける糸(鞘糸)としたカバリングヤーンを作成する必要がある. 今までのカバリングヤーンを作成する機械をそのままで使用すると, 弾性率が大きい鞘糸が巻装置のガイドとの摩擦が大きく, さらに接触角が大きいため糸に毛羽を大量に生じ, 破断してしまい, カバリングヤーンの作成が不可能である. 繊維との摩擦を低減するために表面にテフロンでコーティングしたセラミックスガイドと採用し, ガイドでは繊維を折れないように小曲率曲面を設けるなど, 新型カバリングヤーン機械を設計し自作で完成させた. その機械を利用して, FRPを成形するために必要なカバリングヤーンを毛羽なく, スムーズに量産可能になった. 鞘糸は繊維の引張り強度に寄与せず, バンドは数本の繊維で十分であるため, 鞘糸の繊維の本数はできるだけ少ないことが望ましい. しかし, 高強度繊維を高効率で紡糸するために, 数千本の繊維束にしているのが現状である. 数千本のフィラメント束を数百本, 数十本に分ける必要がある. ここで, 東洋紡の協力を得て, 高弾性率繊維に適した分繊法を新しく提案し, 高弾性率繊維の分繊装置を試作した. 数十本の鞘糸のPBO繊維まで得ることができた.
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